電通総研

≪社会貢献活動≫日米の学生たちの自発的な学びを支援
国際基督教大学×南カリフォルニア大学共同プログラム

新型コロナウイルスの影響により、リモートワークを実施する企業が世界的に増えた、3月。国際基督教大学(以下、ICU)と南カリフォルニア大学(以下、USC)が共同で実施するプログラムの最終プレゼンテーションが、ビデオ会議で行われました。これはICUの鄭朱泳教授※1とUSCのGerald Giaquinta教授※2、Michael Mische教授※3が共同で実施する授業の一環で、東京を拠点とするグローバル企業がそれぞれテーマを設定し、両校の学生が混成チームになってそれに取り組むというものです。
電通総研と電通メディアイノベーションラボは、社会貢献活動の一環として本プログラムに協力。「ソーシャルメディアと若年世代の社会参加」について考えてもらうことで、学生たちの自発的な学びを支援しました。
当初、プロジェクトの最終プレゼンテーションは、USCの学生たちが来日し、東京にて対面で行う予定でした。しかし、想定外の新型コロナウイルスの感染拡大により、急遽、すべてのプロセスをビデオ会議で行うことに。学生たちと我々が直接会えないのはもちろん、ICUとUSCの学生同士も、「はじめまして」の挨拶から、企画、調査、そして最後のプレゼン準備まで、すべてオンラインのやりとりのみで進めることになりました。
それにもかかわらず、電通総研を担当してくださったICUのJahyun Kooさん、津川有里さん、山田彩加さん、USCのAmanda Douglasさん、Roran Leeさん、Leily Zhuさんによるプレゼンからは、彼らがリモートワークの障壁を乗り越え、充実した議論を重ねてきたことが感じられました。ここでは学生たちの学びのプロセスと、その共同作業への感想をお伝えしたいと思います。

電通総研と電通メディアイノベーションラボは、下記のテーマを学生たちに考えてもらうことにしました。

どのようにスマートフォンやソーシャルメディアを活用すれば、若者の社会課題への興味や参加を促すことができるでしょうか?    

彼らに思考を深めてもらうために、電通メディアイノベーションラボの調査(2018年)*を参考として提供しました。この調査では、メディア環境の変化により社会は「包摂・調和」の方向に向かっている、つまり「情報が人々へ行き渡りやすくなることで、見逃されがちな多様な価値観や少数派の考えが社会に反映され、社会がよりまとまりやすくなっている」と、日本の若年世代が感じていることが明らかになりました。

*『頼りにするメディアに関する調査』
詳しくは、電通報「メディア環境の変化によって若年世代の“社会観” はどう変わった?」
URL:https://dentsu-ho.com/articles/7233

学生たちの学びのプロセスと気づき

ICUとUSCの学生たちは、自分たちで調査を設計し、同じ学校の学生を対象に、アンケート調査(計70名)とデプスインタビュー調査(計18名)をしてくれました。

①情報をとるのはソーシャルメディアで。だけど、信頼はしない。

彼らの調査によると、ニュースを手に入れる手段で圧倒的な一位は、日米ともに「ソーシャルメディア」。日本のICUは次点で「テレビ」が続くのに対して、アメリカのUSCでは「会話」が次点に入り、「ニュースアプリ」「ラジオ」を使う人が日本よりも多いのが特徴的でした。USCの学生のほうが、政治や社会問題について、家族や友人と話し合う機会が多く、またそれらへの関心も高いため、ニュースアプリを利用する人が多い傾向があるそうです。
また、ニュースそのものへの信頼度は日米ともに高くはなく、彼らが行ったデプスインタビューでは「ソーシャルメディアで流れてくるニュースは、信じられない」という声が多く聞かれたと言います。

②「社会的参加」の定義が、日常的なアメリカ。おおごとな日本。

社会活動に参加したことがある人は、ICUで33%、USCで41%。ただ、その社会活動を含む「社会参加」や「社会的責任」の定義が、実は多様であることが、彼らの調査から明らかになりました。
日本の学生は規模の大きな活動(例えばデモや抗議運動)を「社会参加」と考えている一方で、アメリカの学生は規模の小さな活動(例えば地元の募金活動の手伝い)も「社会参加」のひとつであると認識していました。特に投票に関しては顕著な違いがあり、「社会的責任」であると考える人がUSCでは83%であったのに対し、ICUでは43%と約半数という結果になりました。
日米で共通していたのは、学生たちがソーシャルメディアで自分の意見を発信することを躊躇していることでした。投稿した文面だけで他人から評価されるのをおそれており、政治や社会問題に関する会話に関しては、オフラインかつパーソナルな環境での議論を好む傾向があると言います。

学生たちからの提案:ソーシャルメディアに、もっと「教育」の役割を。

若い世代にとって、ソーシャルメディアが社会問題に関して積極的に意見を発信できるプラットフォームになるためには、教育的な役割を持つことが必要であると彼らは提案します。社会問題に目を向け、理解する機会をソーシャルメディアが提供することで、自分がその問題について発言できると思えるだけの知識を得られるからです。また、事実に基づいた話し合いは、感情論ではない、建設的な議論を生むだろうと言います。
さらに、若い世代の関心を引くニュースの見せ方として、彼らはビジュアルの大切さを訴えました。特に日本では、若い世代のソーシャルメディアでのコミュニケーションが、「映え」という言葉の流行に代表されるようにどんどん視覚的になっています。ニュースの伝え方も、他のコンテンツに引けを取らないように、視覚的に興味を引き、また理解を促すようなものにする工夫が必要なのではないか、と学生たちは提案してくれました。

意外と難しくなかった?リモートでの共同作業

「国や文化の異なる」「実際に会ったことのない相手」と、しかも、「すべてオンライン」での共同作業。こちらの予想に反して、学生たちからは「意外と難しくなかった」という声が多く聞かれました。東京とカリフォルニア、16時間の時差は壁になったそうですが、会議のスタート時間を固定するなど工夫したそうです。また、こまめにメッセージのやりとりをしたり、チーム全体での会議以外にも個人的に会話をすることにより、お互いのパーソナリティを理解し、関係を築いていったと言います。今回電通総研を担当してくれた学生6人のうち5人が日常的にビデオ通話をすると答えたことから、ビデオ会議も抵抗なくこなす世代なのかもしれません。
リモートワークのメリットとして「議題に集中できた」「スケジュールの調整が難しいから、締め切りを守るなど生産的になれた」、また、「会ったことないから逆に率直に議論ができた」という意見が挙がりました。

〈プレゼンテーションを聞いての感想〉

若い世代が参加しやすい議論の仕組みづくりは社会人の責務


電通メディアイノベーションラボ メディアイノベーション研究部長 美和晃

最も身近で頼りなるメディアだからこそ、自分の書き込みが想定外の人に伝わり誤解を受けてしまうのが怖い——。若い世代に社会参加の入口を与えるはずのSNSも、決してそのままではうまく機能しない、と日米双方の優秀な大学生たちがビデオ会議で本音を語ってくれました。
新型コロナウイルスとの闘いという、国や立場を超えた難局の中でこそ、「包摂・調和」に留まらず本音でつながり、「分断・極化」を乗り越えて協力する若者たちの新たな“声”が生まれることが期待されます。そうした声を聞き取り、次世代が安心して参加できる情報や議論の仕組みを提供する責務が社会人にはある、そんなことを感じたプロジェクトでした。 ICU・USC両校の学生たちの前途に心からエールを送りたいと思います。

※1:国際基督教大学教養アーツ・サイエンス学科教授 鄭朱泳氏
https://researchers.icu.ac.jp/icuhp/
KgApp?kojinId=500665

※2:University of Southern California
Academic Director, World Bachelor in Business Program
Associate Professor of Clinical Business Communication
Gerald Giaquinta氏
https://www.marshall.usc.edu/
personnel/gerald-giaquinta

※3:University of Southern California
Lecturer of Management and Organization
Michael Mische氏
https://www.marshall.usc.edu/
personnel/michael-mische

担当プロデューサー:中川紗佑里、日塔史、馬籠太郎
Text by 中川紗佑里