

電通総研は「クオリティ・オブ・ソサエティ」の活動の基盤として、「人びとの意識の変化がどのような社会を形づくっていくのか」を捉えるため、「電通総研コンパス」と称した定量調査を実施しており、今回の第3回調査では、新型コロナウイルスの感染拡大のもとで過ごした「いつもと違う8月」における、人の意識・行動の変化について焦点を当て、調査(8都道府県・18~79歳までの男女4,320人)をおこないました。
クオリティ・オブ・ソサエティについて https://institute.dentsu.com/about/
調査結果の概要
- 今年の夏休みの増減にコロナの影響「ある」は63.1%
- 8月の移動で見合わせたのは「宿泊を伴う国内旅行」「大人数での会食」
- コロナの感染拡大をきっかけに、社会のことを考える機会が増えた人が過半数
- 「家族」が人の意識や行動変化のトリガーに
- 「行動を抑制するには、法などで規制した方がよい」70.3%
- 「飲食店が休業要請や営業時間短縮要請に従わないことは仕方ないと思う」55.2%
- 「今後は地方自治体が、地域ごとに適切な感染対策案を打ち出した方がよい」67.4%
◎レポート詳細はこちらからご参照ください。
【電通総研コンパス第3回調査】いつもと違う8月における人の意識・行動.pdf
調査結果についてのまとめ
本調査では8都道府県(北海道・東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・愛知県・大阪府・福岡県)を対象に、新型コロナウイルス感染の収束がみえないまま、「いつもと違う8月」を過ごした人の意識や行動の変化に着目しました。結果、「8月の移動に関して新型コロナウイルスの影響で見合わせたこと」などの設問から、8月は人びとの感染への不安が根強かったことがうかがえました。
一方で「飲食店が休業要請や営業時間短縮要請に従わないこと」への設問では、事業者の苦境に配慮する傾向も見られ、人びとが感染防止と経済活動の両立の必要性を感じていることが読み取れます。
また、「今後は地方自治体が、地域ごとに適切な感染対策案を打ち出した方がよい」との回答が過半数を占め、「自身の行動を判断するにあたり最も影響を受ける人」は「家族」と答えた人が最多でした。
感染拡大第一期から約半年を経て、人びとが、地域の感染状況や社会経済活動の状況に細やかに対応する施策の推進を求め、自らの判断によって適切な感染対策と社会経済活動を両立する意識を高めはじめたように思われます。
調査結果の主なトピックスとデータ
- 今年の夏休みの増減にコロナの影響「ある」は63.1%
- 8月の移動で見合わせたのは「宿泊を伴う国内旅行」「大人数での会食」
- コロナの感染拡大をきっかけに、社会のことを考える機会が増えた人が過半数
- 「家族」が人の意識や行動変化のトリガーに
- 「行動を抑制するには、法などで規制した方がよい」70.3%
- 「飲食店が休業要請や営業時間短縮要請に従わないことは仕方ないと思う」55.2%
- 「今後は地方自治体が、地域ごとに適切な感染対策案を打ち出した方がよい」67.4%
8月の夏休みの日数は、平均8.15日。昨年の8月の夏休みと比べて、「増えた」または「減った」と回答した人(合計33.7%)に、夏休みの増減が新型コロナウイルスの影響を受けたかどうかを質問すると、「(影響が)ある」と回答した人が63.1%(図2)となりました。

今年の8月、新型コロナウイルスの影響で見合わせたこととして、居住する都道府県内での移動では「大人数での会食」が、都道府県をまたぐ移動・海外への移動では「宿泊を伴う国内旅行」と回答した人が最も多い結果(図3)となりました。

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、社会のことを考える機会が「増えた」と「やや増えた」という回答を合計すると59.8%(図4)となり、社会への関心が高まっていることがわかりました。

新型コロナウイルスの収束が見通せないなか、自分の行動を判断するにあたり影響を受ける人について、複数回答では「家族」「友人・知人」「医療専門家」の順に回答した人が多かったのですが、最も影響を受ける人を1人選択してもらう単数回答では「家族」「特になし」「医療専門家」の順に多い結果となりました(図5)。なお、最も影響を受ける人が「家族」という結果は、電通総研が5月に1都3県(1,000人)を対象に実施した「いのちを守る STAY HOME 週間」の意識・行動調査と同じでした。社会のことを考えながらも、自らの行動は家族と相談しながら自分たちの判断で決めていかなければならない、という人びとの思いがうかがわれます。

人びとの行動には感染拡大のリスクが伴うためか、行動を抑制しない人を「許せないと思う(68.7%)」が「仕方ないと思う(31.3%)」を上回る結果となりました(図6)。また、行動を抑制するには、「法などで規制した方がよい(70.3%)」が「個人の裁量に任せた方がよい(29.7%)」を上回りました(図7)。
※電通総研が5月に1都3県(1,000人)を対象に実施した「いのちを守る STAY HOME 週間」の意識・行動調査でおこなった類似設問と比較すると、行動を抑制するには「規制(強制)した方がよい」は4.9ポイント増加、行動を抑制しない人を「許せないと思う」は16.2ポイント増加しました。

感染拡大防止と経済活動活性化への考え方については、「感染拡大防止のために、8月は行動を抑制しないといけないと思う(79.2%)」が「経済活動活性化のために、8月は行動を抑制してはいけないと思う(20.8%)」を上回り(図9)、人びとの感染リスクへの不安が浮かび上がりました。一方で、「飲食店が休業要請や営業時間短縮要請に従わないことは仕方ないと思う(55.2%)」が、「許せないと思う(44.8%)」を上回る結果となり(図8)、飲食業や自営業者など地域経済を支える人びとへの配慮もうかがわれます。

今後の感染対策については、「地方自治体が、地域ごとに適切な感染対策案を打ち出した方がよい(67.4%)」が、「政府が、国全体で適切な感染対策案を打ち出した方がよい(32.6%)」を上回りました(図10)。しかし、「感染者数が多い地域から、他の地域へ旅行することは許せないと思う(73.1%)」が「感染者数が多い地域から、他の地域へ旅行しても構わないと思う(26.9%)」を大きく上回っている(図11)ことから、地域ごとに適切な感染対策を打ち出す際も、他地域も含めた社会全体との関係を踏まえて、柔軟で機動的な施策展開をおこなっていくことが求められると考えられます。

本調査内容に関する問合せ先
電通総研 担当:山﨑、千葉、吉田
E-mail: d-ii@dentsu.co.jp
URL: https://institute.dentsu.com
Text by 吉田考貴
Photograph by Stephanie Liverani on Unsplash

吉田考貴 よしだ・こうき
電通総研アソシエイト・プロデューサー
1981年宮崎県日向市生まれ。2017年株式会社電通九州に入社、プロモーションデザイン局に所属。2020年2月より電通総研。主な活動テーマは少子高齢、人口減少社会における「地域」や「教育」のあり方。
1981年宮崎県日向市生まれ。2017年株式会社電通九州に入社、プロモーションデザイン局に所属。2020年2月より電通総研。主な活動テーマは少子高齢、人口減少社会における「地域」や「教育」のあり方。