電通総研は、「人びとの意識の変化がどのような社会を形づくっていくのか」を捉えるために、定量調査「電通総研コンパス」を実施しています。
「職業」に関する人の意識や行動に着目して第4回調査をおこなった結果、変化の予兆を敏感に感じ、変化に向けて前向きに行動しようとする人びとの姿が浮かび上がりました。
調査の視点
近年の日本社会は、経済成長が鈍化し、国際競争力も低下傾向にあるなかで、産業構造の転換やイノベーションが十分進展していたとはいえません。就職、転職、転業などについての人びとの価値観にも従来型の影響が根強く残っているように思われます。
こうしたなかで、突然のコロナ危機により、多くの事業や職業の持続性が問われるとともに、リモートワークや個人請負による配達サービスなどの新しい働き方や新しい職種が生まれてきつつあります。また、新政権が主導する社会全般のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の加速によって、職業のあり方が急速に変わることが予想されます。
こうした環境変化を背景に、人びとの意識や価値観はどのように変化しているのでしょうか。
電通総研は、日本における職業の地殻変動に注目し、人びとの意識や価値観の変化を把握しながら、今後の社会のあり方を探るために、「職業」に関する意識と行動について調査を試みました。
結果の概要
「電通総研コンパス」第4回調査では、就業者を対象に、職業に関する人の意識や行動に着目しました。
調査結果からは、変化の予兆を敏感に感じ、変化に向けて前向きに行動しようとする人びとの姿が浮かび上がりました。
■「職業」にかかわる変化の予兆
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、社会のことを考える機会が「増えた」人が55.4%と過半数を占めました。
そんななか、 81.1%の人が日本社会において職業のあり方に「変化が生じる」のではないかと感じています。
自分がついている職業について、過半数の人が現在の職業に「満足している(57.2%)」一方で、「デジタル化や技術の進歩などの影響を受ける(60.9%)」と、変化の予兆を敏感に感じており、10年後、職業自体は存在するが「変化する(58.7%)」と考える人が多数を占めました。
■「転職」という選択肢も見据えて
これまでに職業を変えたことがある人は51.4%でした。今後については、同じ組織内での職業変更も含めて「違う職業・仕事につくこと(42.9%)」を考えている、「考えていない/わからない(36.5%)」、「今の職業・仕事を極めたい(20.6%)」と、人それぞれの考えが浮かび上がりました。10年以内に職業を変える可能性について、「ある(38.4%)」と回答した人がもっとも多かったものの、「どちらともいえない(32.7%)」、「ない(28.9 %)」と回答した人も少なくなく、ほぼ三分した形となりました。
労働市場が流動化し、人びとを支える社会のしくみが整備されれば、今後、職業を変える人も増えるかもしれません。
■ 変化に向けて、「専門知識やノウハウ・スキルを学ぶ」ことに関心
職業をとりまく社会環境の大きな変化が予測されるなか、「より良い仕事や収入を得ることを目的とした能力開発」に取り組んでいる人は62.5%。さまざまな取り組みのなかでも、「専門知識やノウハウ・スキルを学ぶ(30.9%)」ことへの関心が高いようです。変化の予兆を敏感に感じ、変化に向けて前向きに行動しようとする人びとによって、日本社会が活性化されることが期待されます。
電通総研は、これからも、人びとの意識・行動の変化に着目し、より良い社会のための兆しを見つけるべく、
「クオリティ・オブ・ソサエティ」の活動を推進してまいります。
調査結果の主なトピックスとデータ
- 日本社会において職業のあり方に「変化が生じる(81.1%)」
今後、日本社会における職業のあり方についてどの程度の変化が起きると思うかという設問に対して、「やや変化が生じる」と回答した人が51.5%と過半数を占めました。「大きな変化が生じる(29.6%)」と回答した人とあわせると、81.1%の人が、なんらかの変化が生じる予兆を感じています(図1)。

- 自分の職業は、「デジタル化や技術の進歩などの影響を受ける(60.9%)」、10年後は「変化する(58.7%)」
現在自分がついている職業が、今後デジタル化や技術の進歩などの影響をどの程度受けると思うかという設問に対して、「やや受ける(42.1%)」と回答した人がもっとも多く、「とても強く受ける(18.7%)」と回答した人とあわせると、60.9%※1の人が影響を受けると考えています(図2)。
10年後、現在ついている職業がどうなっているかという設問に対しては、「変化するが職業自体は存在している(58.7%)」と回答した人がもっとも多く、ここでもなんらかの変化を覚悟している人びとの思いが読み取れます(図3)。

※1:合計数値は、回答者の実数をベースに算出しているため、四捨五入の関係で、まとめる前の数値の合計と一致しない場合があります。
- 「違う職業・仕事につくこと(42.9%)」を考えている、10年以内に職業を変える可能性が「ある(38.4%)」
多くの人が、現在ついている職業は今後変化するだろうと思うなか、人びとの職業に対する思いもさまざまです。今後、「今ついている職業・仕事を極めていきたい(20.6%)」と考える人がいる一方で、「今とは全く違う職業・仕事につくこと(12.2%)」や「今所属している組織の中で、違う職業・仕事につくこと(10.7%)」、「漠然と今とは違う職業・仕事につきたい(20.1%)」と答えた人をあわせると、42.9%※2の人が「違う職業・仕事につくこと」を考えています(図4)。
また、10年以内に職業を変える可能性について、「とてもある」と「ややある」をあわせて「ある(38.4%)」と回答した人がもっとも多かったものの、「どちらともいえない(32.7%)」、「あまりない」と「まったくない」をあわせて「ない(28.9 %)」と回答した人も少なくなく、ほぼ三分した形となりました(図5)。労働市場が流動化し、そうした人びとの動きを支える社会のしくみが整備されれば、今後、職業を変える人も増えるかもしれません。

※2:合計数値は、回答者の実数をベースに算出しているため、四捨五入の関係で、まとめる前の数値の合計と一致しない場合があります。
- より良い仕事や収入を得ることを目的に、「専門知識やノウハウ・スキルを学ぶ」(30.9%)
62.5%の人が「より良い仕事や収入を得ることを目的とした能力開発」にとりくんでいることが明らかとなりました。なかでも、「専門知識やノウハウ・スキルを学ぶ(30.9%)」ことにとりくんでいる人がもっとも多い結果となりました。(図6)。

調査概要
●「電通総研コンパス」第4回調査(「職業」に関する人の意識・行動)
調査時期: 2020年10月10日~12日
調査方法: インターネット調査
対象地域: 全国
対象者 : 18歳~69歳男女就業者 3,000人
◎レポート詳細はこちらからご参照ください。
【電通総研コンパス第4回調査】「職業」に関する人の意識・行動.pdf
Text by 山﨑聖子
Photograph by Jan Huber on Unsplash