電通総研

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クオリティ・オブ・ソサエティ調査2020
社会に関する人びとの意識・価値観の現在地
2021.03.29

# クオリティ・オブ・ソサエティ

# SSX


電通総研と電通未来予測支援ラボは、東京経済大学・柴内康文教授の監修のもと、「クオリティ・オブ・ソサエティ調査2020」を、2020年11月に日本全国12,000名を対象に実施しました。「クオリティ・オブ・ソサエティ調査」は、社会に関する人びとの意識・価値観を把握することを目的として、2019年12月に第1回調査を開始し、以後、毎年定期的にデータを収集・蓄積していく計画です。

調査にあたっては、
①人びとのよりよい生活のために、社会システムは機能しているか
②よりよい社会のために、人びとは協力し合えているか
③よりよい人生のために、人びとは前向きで自律的であるか
という3つの問題意識から設計を行っており、今回の調査の設問は38項目191問に及びます。

本記事では、調査結果をもとに【社会】、【家族・コミュニティ】、【個人】の3つの視点から抽出した10のファインディングスをご紹介します。また、社会情勢の変化に応じて設問の追加や変更を行った項目を除いて、「クオリティ・オブ・ソサエティ調査2019」の結果との比較も試みました。

*グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。また、各割合を合算した回答者割合も、全体に占める合算部分の回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値と必ずしも一致しない場合があります。

*12,000サンプルの標本サイズの誤差幅はから、1.96×0.5*0.5/109.544=0.9/100となります。よって2019年との比較で±1ポイントの差があれば有意な差があるとみなされますが、本記事では2ポイント以上変動があったものを有意な変化として扱っています。


クオリティ・オブ・ソサエティについて
https://institute.dentsu.com/philosophy/



    主なファインディングス



    【社会】
  1. 安心感の高い日本の社会保障の上位2項目は「国民皆保険」「医療」(ともに37.2%)、「国民皆保険」は前年比12ポイント増加
  2. 情報源やメディアに最も期待することは「常に正しい情報を提供」(84.6%)
  3. ロボットやAI(人工知能)に期待することは「犯罪の予測と未然防止」(46.4%)

  4. 【家族・コミュニティ】
  5. 新しい家族の形として受け入れられているのは、「男性の育休取得」(78.8%)、「国際結婚」(73.2%)、「主夫」(70.4%)で、いずれも1年間で5ポイント以上増加
  6. 状況にかかわらず「相談できる人・助けてくれる人」や「相談にのりたい人・助けたい人」は「配偶者・パートナー」が高い(38.9%~53.7%)が、災害時には「近所の人」や「友人・仲間」も
  7. 各種支援活動のなかで「社会に必要だと思う」活動の1位は「災害復旧・復興支援活動」(55.6%)
  8. 自分の人間関係・社会関係は「良好だと思う」(6割)一方、互いにわだかまりがあると思うのは「高所得層と低所得者」(68.8%)

  9. 【個人】
  10. 働き方に関する全21項目で理想と現実にギャップ、理想の働き方として求められることは前年比で「雇用の安定」は2.5ポイント増加、「収入」は2.9ポイント減少
  11. 過半数が心と体は「健康」、「生活に満足」で経年変化なし、今後については「家計に占める税と社会保険料の負担感」(61.9%)が悪化することを懸念
  12. 子どもたちに身に付けてほしいのは「相手を思いやる心」71.5%


    調査結果についてのまとめ



    今回の調査結果から、日本の社会保障として「国民皆保険」に対する安心感が1年前と比較して12ポイント増加したこと、半数近くの人がロボットやAIには犯罪の未然防止を期待していること、8割以上の人がメディアや情報源には「常に正しい情報」を求めていることがわかりました。社会が大きく変化するなかで、より安全で安定した社会が求められていると同時に、正しい情報をもとに判断したいと考える人びとの気持ちがうかがわれます。

    「男性の育休取得」や「主夫」については、1年間で肯定的な意見が増えました。男性の育児や家事への参加に対する受容が高まったのは、コロナ危機により家庭で過ごす時間が増えたことが影響を及ぼしているのかもしれません。状況にかかわらず助け合いや相談の相手として配偶者・パートナーや家族・親族は重視されていますが、家族・親族以外の人との関係は希薄なようです。各種ボランティア活動について多くの人が「社会に必要」と思いながらも、実際に行動に移すところまで至っていない人が多いのは、こうした人びとの意識が背景にあるのかもしれません。とはいえ災害時には、近所の人や友人・仲間との助け合いも意識されており、過去のさまざまな災害の記憶が人びとの心に影響しているようです。

    心身ともに「健康」、「生活に満足」とする回答については、1年間で大きな変化はみられませんでした。一方、理想の仕事や働き方について、「雇用の安定」への回答が前年比で増加していること、また今後については家計における税などの負担感を懸念していることなど、雇用や家計における不安が垣間見えました。社会が大きく変化するなかで、子どもたちには「相手を思いやる心」を身に付けてほしいと考える人が多かったことは、望ましい社会の方向性を指し示す貴重な示唆と考えられます。

    2020年は新型コロナウイルスの感染拡大が世界に大きな影響を及ぼしました。日本社会も今後大きく変化していくことが予想されます。人びとと社会がどのように変化していくのか、引き続き注目が必要です。





    調査結果の主なファインディングスとデータ



  1. 安心感の高い日本の社会保障の上位2項目は「国民皆保険」「医療」(ともに37.2%)、「国民皆保険」は前年比12ポイント増加
  2. 「日本の社会保障」に対する安心感について、上位2項目は「国民皆保険」37.2%、「医療(予防、診断、治療サービス)」37.2%となりました。特に「国民皆保険」は2019年比+12.1ポイントと大幅に増加しました。感染拡大に伴う他国における医療体制に関する報道などに触れることで、日本の社会保障が改めて高く評価されていることがうかがえます。


    「税負担は大きいが、公的福祉や社会保障が手厚い北欧型社会が良い」か「税負担が小さく、医療や年金を個人の保険で賄うアメリカ型社会が良い」かを聞いたところ、過半数の人が、税負担があっても北欧型の手厚いサービスを求めていることが明らかとなりました。





  3. 情報源やメディアに最も期待することは「常に正しい情報を提供」(84.6%)
  4. 情報源やメディアごとに「どれだけ必要」かを聞いたところ、「必要である」または「やや必要である」との回答は、「ネット通販サイトやアプリ」76.7%、「ニュースサイトやアプリ」75.4%、「民放の地上波テレビ放送」72.9%の順に高い結果でした。ネット系や地上波テレビ以外にも、本や雑誌、ラジオ、新聞なども過半数近く、あるいはそれ以上の人が必要と感じており、多様なメディアの併存が求められていることが明らかとなりました。


    情報源やメディア期待することとしては、1位が「常に正しい情報を提供して欲しい」84.6%、2位が「信用できる情報を提供してくれることを期待している」78.9%と、「正しい」「信用できる」ことが重視されています。





  5. ロボットやAIに期待することは「犯罪の予測と未然防止」(46.4%)
  6. 「よりよい社会」のために、「ロボットやAI(人工知能)他の技術」に期待することとしては、1位が「犯罪の発生を予測し、未然に防ぐ」46.4%、2位が「自分の体質・体調に合わせて医療や健康情報を教えてくれる」40.1%、3位が「言語の壁を超えた国際交流を可能にしてくれる」39.8%。これらに対して、「政策決定、裁判判決」5.7%、「昇進や昇給の判断」6.5%、「より相性の良い相手との出会いを提供」9.6%などへの回答は少なく、ロボットやAIによるサポートへの期待は高いものの、意思決定までは望んでいないことがうかがわれました。


    一方で「社会の発展のために、個人データを提供するとしたら、どのような種類のデータを提供してもよい」と思うかを聞いたところ、1位が「個人を特定できない属性情報」56.4%、2位が「いずれも提供したくない」34.8%、3位が「行動に関する履歴情報(購買履歴や閲覧履歴など)」16.0%となり、個人情報の提供には慎重な様子が明らかとなりました。





  7. 新しい家族の形として受け入れられているのは、「男性の育休取得」(78.8%)、「国際結婚」(73.2%)、「主夫」(70.4%)で、いずれも1年間で5ポイント以上増加
  8. 「新しい家族の形」として「受け入れられる」もの上位3項目は、「男性の育休取得」78.8%(2019年比+6.5ポイント)、「国際結婚」73.2%(2019年比+5.3ポイント)、「主夫」70.4%(2019年比+8.1ポイント)。男性の育児参加や家事への参画は今や共通理解となりつつあるようです。


    一方で「家事」「育児」「介護」に関するサービスの利用については、公的・地域ボランティア・民間のサービス、同居していない家族や親族の支援のいずれも利用したことがない人が77.5%と、全体の8割近くの人が利用していないことが明らかとなりました。





  9. 状況にかかわらず「相談できる人・助けてくれる人」や「相談にのりたい人・助けたい人」は「配偶者・パートナー」が高い(38.9%~53.7%)が、災害時には「近所の人」や「友人・仲間」も
  10. 状況別に「相談できる人・助けてくれる人」として、「配偶者・パートナー」は6項目中5項目で一番高く、38.9%~53.7%でした。その他、「親」が1項目で1位、3項目で2位、「子ども」が2項目で2位と、家族などの身近な人に対する回答が多い結果となりました。家族や親族以外の回答が全般的に低いなか、「災害時」には「近所の人」や「友人・仲間」と回答した人や、「介護の手助けがいる時」には「専門職」と回答した人も2割程度見られました。 状況別に「相談にのりたい人・助けたい人」は、「配偶者・パートナー」が全項目で最も高く44.8%~51.9%、次いで「親」が36.1%~50.7%と全項目で2位となりました。前問と同様、家族や親族以外の回答が全般的に低いなか、「自分の持っている知識・能力で助けられる時」や「災害時」には「友人・仲間」と回答した人が3割程度いることが注目されます。





  11. 各種支援活動のなかで「社会に必要だと思う」活動の1位は「災害復旧・復興支援活動」(55.6%)
  12. さまざまな支援・募金活動やボランティアなどを14例示したほか、その他自由回答による活動も含め、それぞれについて社会での必要性、参加意向、1年以内の参加経験を聞いたところ、「社会に必要だと思う」との回答が最も高かったのは「災害復旧・復興支援活動」で55.6%、次いで「地域の防災活動・ボランティア」で39.1%、「地域の防犯活動・ボランティア」で36.5%でした。ただしいずれの活動も、「参加したいと思う」との回答は4.0%~16.2%で、「1年以内に参加したことがある」との回答に至っては1.2%~15.1%と低い結果となりました。






  13. 自分の人間関係・社会関係は「良好だと思う」(6割)一方、互いにわだかまりがあると思うのは「高所得層と低所得者」(68.8%)
  14. 人間関係・社会関係について、「良好だと思う」計は58.0%、「良好だとは思わない」計は14.3%と、過半数が人間関係・社会関係は良好であると回答しました。


    さまざまなグループや属性を提示し、それぞれについてお互いに共感・尊重し合えていると思うか聞いたところ、全てのグループや属性で、「共感・尊重し合えている」より「わだかまりがある」という回答が多い結果となりました。最もわだかまりがあるのが、「高所得層と低所得者」68.8%、ついで「政治家と国民」66.8%、「正規社員と非正規社員」58.3%の順でした。


    2019年との比較では、「都市と地方」、「会社経営層と一般社員」、「政治家と国民」においては「わだかまりがある」は3ポイント以上減少しました。





  15. 働き方に関する全21項目で理想と現実にギャップ、理想の働き方として求められることは前年比で「雇用の安定」は2.5ポイント増加、「収入」は2.9ポイント減少
  16. 働き方について、「理想」と「現在」の差が大きいのは「希望に合った収入が得られる」45.0ポイント、「雇用が安定している」42.6ポイント、「自分にとって興味がある・好きな仕事ができる」38.6ポイントで、理想と現実に大きなギャップを感じています。 「理想の働き方」について2019年の調査結果と比較すると、最も増えたのが「雇用が安定している」で+2.5ポイント、最も減ったのが「希望に合った収入が得られる」で-2.9ポイント。経済不安を背景にしてか、安定を求める傾向が見られました。





  17. 過半数が心と体は「健康」、「生活に満足」で経年変化なし、今後については「家計に占める税と社会保険料の負担感」(61.9%)が悪化することを懸念
  18. 身体と心の健康について、身体は61.6%、心は56.8%が「健康」と回答し、それぞれ19.0%、20.8%が「健康ではない」と回答。生活の満足度は「満足(計)」50.8%、「不満(計)」22.3%と、半数が生活に満足していると答えました。これらはいずれも2019年とほぼ変わらない結果でした。


    一方で、今後の暮らしの見通しについて「悪くなっていく」または「どちらかといえば悪くなっていく」との回答は、「家計に占める税と社会保険料の負担感」61.9%が最も高く、次いで「収入・家計状況」44.3%、「就労機会と雇用の安定」42.3%。多くの人が家計や雇用に不安を感じていることがうかがわれます。





  19. 子どもたちに身に付けてほしいのは「相手を思いやる心」71.5%
  20. 「子どもたちに、どのような心構え、姿勢を身に付けてほしい」かを聞いたところ、1位「相手を思いやる心」71.5%、2位「自立心」55.5%、3位「粘り強さ、努力する姿勢」55.5%となりました。





調査概要

タイトル:「クオリティ・オブ・ソサエティ調査」
調査時期:第1回 2019年12月11日~18日、第2回 2020年11月11日~17日
調査手法:インターネット調査
対象地域:全国
対象者:18~74歳の男女計12,000名
調査会社:株式会社電通マクロミルインサイト


本調査内容に関する問合せ先

電通総研 担当:山﨑、千葉
E-mail: d-ii@dentsu.co.jp
URL: https://institute.dentsu.com

未来予測支援ラボ 担当:小椋、村越、立木
E-mail: future@dentsu.co.jp
URL: https://www.dentsu-fsl.jp


Text by 千葉貴志
Photograph by Aubrey Odom on Unsplash



千葉貴志 ちば・たかし

電通総研プロデューサー

1985年東京都生まれ。2008年株式会社電通に入社。2020年2月より電通総研。クオリティ・オブ・ソサエティ調査、電通総研コンパスvol.1、vol.2を担当。スポーツ、メディアに関わる過去の業務経験をもとに「地域社会とスポーツ」、「メディアの未来」を主な活動テーマとしている。

1985年東京都生まれ。2008年株式会社電通に入社。2020年2月より電通総研。クオリティ・オブ・ソサエティ調査、電通総研コンパスvol.1、vol.2を担当。スポーツ、メディアに関わる過去の業務経験をもとに「地域社会とスポーツ」、「メディアの未来」を主な活動テーマとしている。