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村田晶子氏・森脇健介氏・矢内琴江氏・弓削尚子氏
ジェンダーに関する身近な問題に気づくには
ジェンダーに関する身近な問題に気づくには
クオリティ・オブ・ソサエティ(QoS)を活動テーマに掲げる電通総研は、世界価値観調査など各種定量調査や各界有識者からの視点に基づき、これからの社会像についての知見を積み重ねてきました。
そして2020年12月、全国18~79歳の男女6,000名を対象に、「社会の現状や10年後の予測」について21項目(*1)にわたる調査「クオリティ・オブ・ソサエティ指標(パイロット調査)」を実施し、調査の結果から、人びとの実感に基づき社会の健康状態を確認する「社会の健康診断」レポートを取りまとめました。
◎「クオリティ・オブ・ソサエティ指標(パイロット調査)」レポートはこちらからご覧ください。
クオリティ・オブ・ソサエティ指標(パイロット調査)レポート.pdf
◎
「日本社会の健康診断」レポートはこちらからご覧ください。
日本社会の健康診断.pdf
今、人びとは社会が抱える課題についてどのような問題意識を持っているのか。社会の健康リスクに関わる6項目*²は次のとおりです。数値が大きいほどリスクが高いことを示しています。
リスク対応の社会的脆弱性 | : | 大地震、気候変動による災害、インフラの老朽化などさまざまなリスクに対して十分に対応・整備できていない |
国の余力不足 | : | 日本には余力がない |
地域社会の余力不足 | : | 自分が住む地域社会には余力がない |
家計の余力不足 | : | 自分の家計には余力がない |
出生数は減り続けていく | : | 10年後、日本の出生数は減り続けている |
技術進歩で人間性が 損なわれる世界になる |
: | 10年後、技術が進歩するほど、人間性が損なわれる世界になっている |
診断結果
余力不足によるリスクが高い
国家レベルから個人レベルまで、多くの人は「余力がない」と感じており、次いつ起こるかわからない地震や気候変動による災害、出生数の減少、技術進歩によって人間性を損なうといった、多くのリスクを感じているようです。
未来社会のシナリオにはさまざまなオルタナティブ(選択肢)があります。人びとがどのような社会を志向しているかに関わる項目は次のとおりです。
(注)グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。そのため、各割合の合計は必ずしも100%とならない場合があります。
診断結果
処方(意見)が分かれる望ましい社会像
地球環境問題解決の加速、一極集中より多極分散、中央集権より地方分権といった志向性が特に高く、他に国際協調、福祉国家への志向性もみられます。一方、平等社会か自由競争社会かについては拮抗しており、今後の変化に注目しましょう。
社会課題やリスクを克服し、望ましい社会像に向けて、人びとがどのように感じているのか。こころの状態に関わる項目は次のとおりです。
(注)グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。そのため、各割合の合計は必ずしも100%とならない場合があります。
診断結果
不安を和らげ、他者に寛容な信頼社会へ
多様性を生かしたインクルージョンの達成や、多様な人的ネットワークに基づく社会関係資本の充実など、社会の体質改善へ向けて経過観察が必要です。何より、これからの社会に対して「希望」をもてない人が多数いることは、根本的な課題として注目する必要があります。
希望をもてる社会へ向けて浮かび上がった5つのキーワード
「他者への寛容」「デジタル化による教育機会の拡大、不平等の解消」
「余力」「インクルージョン」「人間性」
今回の結果から、社会に対する人びとの実感として、国、地域社会、家計には「余力がない」と感じる人が過半数を占めるとともに、多くの人がこれからの社会に不安を感じ、希望を持てないでいる状況が明らかになりました。
「デジタル化による教育機会の拡大、不平等の解消」や「インクルージョンの達成」については意見がほぼ二分しました。一方、今後目指すべき社会像に関しては、「地球環境問題への取り組みを加速すべき」、「多様性に富む多極型社会を目指すべき」などの方向性に支持が集まりました。
また項目間のクロス分析を行ったところ、「希望がある」と感じている人は、次の7項目について、全体よりポジティブである傾向が見られました。
① | 他者の行動に対して寛容な態度をとりたい(全体76.1%に対して81.1%) |
② | デジタル化は、教育機会の拡大、不平等の解消につながる(全体50.1%に対して62.4%) |
③ | 自分の住む地域社会には余力があると思う(全体41.5%に対して60.5%) |
④ | 日本には余力があると思う(全体31.2%に対して53.7%) |
⑤ | 自分の家計には余力があると思う(全体38.2%に対して52.1%) |
⑥ | 10年後、年齢、国籍、性別などが制約にならない社会になっている(全体44.1%に対して51.1%) |
⑦ | 10年後、技術が進歩するほど、人間性が大切にされる社会になっている(全体36.4に対して49.2%) |
多くの人が希望をもてる社会の実現に向けた処方箋を描くためには、「他者への寛容」「デジタル化による教育機会の拡大、不平等の解消」「余力」「インクルージョン」「人間性」といった5つのキーワードが浮き彫りになったと言えます。
未来社会に向かうシナリオにはさまざまな選択肢があるでしょう。しかし上記のキーワードを踏まえ、未来に向けて広く議論し合意形成していくこと、そして多くの人びとがそのプロセスを共有することにより、ポジティブな連鎖が生まれ、未来に向けた希望も芽吹いてくるのではないでしょうか。
私たちは今回得られた知見をもとに、「社会の健康診断」を充実させつつ、定期的に測定結果を発信し、日本社会のサステイナビリティについての議論や合意形成のプロセスに貢献したいと思います。
社会の健康を測定するための21項目
社会の健康リスクに関わる6項目
●クオリティ・オブ・ソサエティ指標(パイロット調査)
調査時期:2020年12月25日~26日
調査方法:インターネット調査
対象地域:全国
対象者 :18~79歳男女計6,000人(高校生を除く)
調査会社:株式会社電通マクロミルインサイト
※調査結果の各割合は回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値が必ずしも100%にならない場合があります。
電通総研 担当:山﨑、吉田、日塔
E-mail:d-ii@dentsu.co.jp
URL:https://institute.dentsu.com
Text by 吉田 考貴
電通総研アソシエイト・プロデューサー
1981年宮崎県日向市生まれ。2017年株式会社電通九州に入社、プロモーションデザイン局に所属。2020年2月より電通総研。主な活動テーマは少子高齢、人口減少社会における「地域」や「教育」のあり方。
1981年宮崎県日向市生まれ。2017年株式会社電通九州に入社、プロモーションデザイン局に所属。2020年2月より電通総研。主な活動テーマは少子高齢、人口減少社会における「地域」や「教育」のあり方。