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世界価値観調査
コロナ危機を経て変化した日本の価値観

「世界価値観調査」は、世界のおよそ100か国・地域の研究機関が参画する世界最大規模の意識調査です。同一の調査票に基づき、各国・地域に在住する18歳以上一般個人1,000人程度を調査対象としており、対象分野は政治観、経済観、労働観、教育観、宗教観、家族観など290項目以上の広範囲に及びます。初回調査は1981年に実施され、以降1990年、1995年、2000年、2005年、2010年、2019年と計7回実施し、電通総研は第2回の1990年からこのプロジェクトに参画しています。第7回調査の分析結果は、これまで2度にわたって発表しました。

①2020年3月:「日本の時系列比較」
「世界価値観調査」1990~2019年日本時系列分析

②2021年3月:「最大77か国の国際比較」
第7回「世界価値観調査」レポート 最大77か国比較から浮かび上がった日本の特徴

日本の第7回調査は2019年9月に実施されましたが、その後間もなく新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起こり、人びとの生活や行動は大きな変化を余儀なくされました。電通総研は、コロナ危機が人びとの価値観に与える影響を捉えることが必要であると考え、2020年11月に日本独自で調査を実施しました。2019年9月と同じ質問票を用い、同じ抽出方法かつ調査方法で実施することで、コロナ危機発生前の2019年 (第7回「世界価値観調査」)と発生後の2020年(日本独自調査)の時系列比較を可能にしています。
この記事では、両調査の結果を比較し、特に変化が大きかったものを取り上げます。主なファインディングスは以下のとおりです。

*回答率(%)は全体に占める回答者の実数に基づき算出し、小数点第2位以下を四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値とは一致しない場合があります。

調査結果

1.【経済】「雇用創出」が最優先。国からの「失業手当」は「民主主義に必須」が7ポイント増加

「経済成長率が低下して失業がある程度増えても、環境保護が優先されるべき」か、「環境がある程度悪化しても、経済成長と雇用の創出が最優先されるべき」かを尋ねたところ「経済成長優先」を選択する人の割合が、2019年から5ポイント程度上昇しました(図1-1)。

また、「国民が国から失業手当を受ける」のを「民主主義に必須である」と考える人の割合も2019年から7ポイント増加しました(図1-2)。コロナ危機下で停滞する景気により、大きな影響を受けた雇用・就業への対応を望む人びとの思いが垣間見える結果となりました。

2【日本の現状】日本が悪い方向に向かっているのは、「雇用・労働状況」「教育」

「日本が悪い方向に向かっているもの」を尋ねたところ、「雇用・労働状況」がもっとも高く、これに「社会道徳・倫理観」「自然環境」「国際的な政治力」「経済競争力」「教育水準」が続きました。2019年と比べると、「雇用・労働状況」が13.2ポイント増、「教育水準」が6.4ポイント増となった一方、「国内の治安」は8.3ポイント減となりました(図2)。

3.【情報】「インターネット」に「毎日」接触する人の割合が6.3ポイント増加

国内外の出来事を知るために、「インターネット」から情報に「毎日」接触するという人の割合が、6.3ポイント増えました(図3)。「ソーシャルメディア(Facebook、Twitterなど)」に関しては、「接触あり」(「毎日」から「月1回以下」までの合計)が2019年の44.1%から2020年は48.9%となっており、2019年比では8つの情報源の中でもっとも伸長しています。

4.【選挙】選挙制度への信頼が11.2ポイント増加

「選挙」の信頼度は、2020年は「信頼する」が11.2ポイントの大幅増となりました(図4-1)。

また、日本の選挙で起こることとして「投票数が公正に数えられる」「有権者が完全な自由意思で投票できる」はいずれも2019年から増加して7割を超えています(図4-2、図4-3)。2020年の調査時期が米大統領選のかつてない混乱が日々報道された時期と重なり、米国との比較で相対的に自国の選挙制度を見直した可能性があります。

5.【社会】「改革によって徐々に変えていかなければならない」6.1ポイント増加

社会に対する意見に関する質問では、「改革によって徐々に変えていかなければならない」を選択した人が過半数を占め、2019年から6ポイント程度増加しました(図5)。コロナ危機により社会のひずみが浮き彫りになったことや、変化に拍車がかかったことにより、変革の必要性を感じる人が増えたことが考えられます。

レポートでは、2019年から2020年で回答の変化が見られたものを中心に、「仕事」「ジェンダー平等」「メディア・情報」「選挙」など注目度の高いテーマ別に、1990年の第2回調査からの時系列比較をまとめています。

◎レポート詳細はこちらからご参照ください。
「世界価値観調査」1990~2020年日本時系列分析レポート.pdf

本調査内容に関する問い合せ先
電通総研 担当:山﨑、中川、木村、日塔
Email:d-ii@dentsu.co.jp
URL: https://institute.dentsu.com

Text by 中川 紗佑里



中川紗佑里 なかがわ・さゆり

電通総研プロデューサー

奈良県生まれ。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ卒。2020年2月より電通総研。世界価値観調査、コロナ危機下の価値観に関する国際調査を担当。主な活動テーマは、ジェンダー、ウェルビーイング、気候変動。

奈良県生まれ。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ卒。2020年2月より電通総研。世界価値観調査、コロナ危機下の価値観に関する国際調査を担当。主な活動テーマは、ジェンダー、ウェルビーイング、気候変動。