メイダイのウェビナー=「メビナー」で公共財としての大学の価値を発信
2021年5月に名古屋大学の知を発信するウェビナー「メビナー」が本格始動しました。
2020年はコロナ禍で、リアルに集まって勉強会・研究会をするというのができなくなりました。名古屋大学も学生が大学に来られないという状況下で教育はどうするべきか、オンラインによる大学教育について議論するウェビナーを開催しました。データダイエットなど、さまざまな論点が出てきて、そのウェビナーに松尾清一総長もずっと参加していたのですが、いろいろな人がたくさん来るし、議論も活発にできるし、「ウェビナーはとてもいい!」と(笑)。カルチャーとして「どんどんやりましょう」と推奨する流れになっていました。そこで、きちんと大学としてオーガナイズした形で情報発信をし、
・大学の情報発信の起点にする。
・多様なステークホルダーを巻き込んで大学の応援団を作る。
・マネタイズの可能性を探る。
といったことを議論しました。一般のウェビナーと差別化して、名大らしさを訴求できるものにしたいということでネーミング作業についてもご協力いただいて、名大のウェビナーだから「メビナー」ということで、こちらは商標登録もさせていただきました。月ごとにテーマを変えて、シリーズで進めていく予定です。
アカデミアからの発信を、一般の人でも聞けるというのは嬉しいです。ウェビナーの準備にもつながった面もあるのかなと思うのですが、学内で「100人インタビュー」という企画を行ったと伺いました。
名古屋大学の教員は、1,700人ぐらいいると思います。良い表現ではないですが、たこつぼ型の組織になっているので、学部が違うと、どういう先生がいて、何を研究しているのかお互い知らない状況です。社会的な出来事があったりすると、学識経験者としてのコメントを求められることが大学には結構あるのですが、学内のどこに何という先生がいるのか調べないと、自分たちもすぐにはわからない。大学がこれから社会と一緒にやりましょうと言っているのに、あまりにも不親切な状況なので、電通の名大駐在メンバーに中心になってもらい、問い合わせがあったときに交通整理できるものがあるといいよねということで始まったのが「100人インタビュー」です。
2020年12月には名古屋大学・電通・中日新聞社の三者でも連携協定※6を結んでいます。地域に密着したメディアである、中日新聞と組んだ狙いについてはいかがですか。
中日新聞は、この地域の大きな新聞社で、協賛をしていただいたり取材を受けたりということは過去にもあったのですが、包括的連携協定という形をとることで、大学側が発信したいことについて深くコミットしていただけるようになったのは良かったと思っています。2020年末には「アカデミアと語る地域社会課題」という広告記事を出していただいたり、キャリア教育といった大きなテーマについて、小中高生向けのキャリア教育支援事業を始めたりと、具体的な展開がこれからいろいろあるというところです。
今後の展開が楽しみです。学外の組織と連携してみた率直なご感想はいかがでしょうか。
個人的には非常に良かったと思っています。これからの大学経営を考えていったときに、学外のステークホルダーの皆さんとのお付き合いの仕方であるとか、逆に自分たちがどう見られているとか、どう見られたいのかといった、そういうことが非常に重要になってくるでしょう。中にいる教職員だけではスキルもノウハウもないので、相談しながら協働できるというのは良いことだと思っています。特に、外の人たちがこういうことを考えているのだという情報は、大学の中にいてはわからないことなので。ステークホルダーの皆さんが考えていることをうまくフィードバックしていただけると、それに対してうまく大学も対応できて、良い関係性が生まれることが期待できます。
電通総研では、社会課題に取り組む際に組織と組織の間をつなぐ「緩衝材組織」の役割に注目しています(「日本の潮流―SSXで創る『余力社会』という未来へ」)。さまざまなステークホルダーの意向をまとめるときは、間に立ってクッションとなる緩衝材のような存在が必要ということですね。
※1 2020年2月13 日、大学の財源多様化や学術的知見の社会的還元を目指し、名古屋大学と電通は包括的連携契約を締結した。
https://www.nagoya-u.ac.jp/info/post_133.html
※2 大学の「稼ぐ力」については、松尾清一総長も「交付金に頼らず、自ら稼げる大学になることが求められている」とコメントしたことがある。