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「クオリティ・オブ・ソサエティ」レポート
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コロナ危機下の価値観に関する国際調査
日本版第2波(2021年4月実施)の結果

「コロナ危機下の価値観に関する国際調査(Values in a Crisis Survey)」(以下「VIC調査」)の日本版第2波(以下「2021年4月調査」)を2021年4月5日~19日に実施しました。調査では、2020年5月に実施した第1波(以下「2020年5月調査」)と同一の質問に加え、コロナ危機下における行動のルール、家族や仕事に関する質問をおこない、人びとの意識の変化などを明らかにしました。本調査は、コロナ危機下における日本の人びとの意識の変化を中長期的に捉えることを目的とした調査であり、2022年にも実施予定です。また、日本を含む15か国でも実施されており、今後、国際比較の結果や、時系列変化の結果も発信する予定です。

*グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。また、各割合を合算した回答者割合も、全体に占める合算部分の回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値と必ずしも一致しない場合があります。

2020年5月調査との比較と追加質問からのファインディングス

  1. コロナ危機による経済や社会への、負の影響に対する不安の低下
  2. 人びとはコロナ危機下において「適切にふるまっている」が増加
  3. コロナ危機下の生活に折り合いをつけつつも、ルール遵守に疲れ
  4. 「妊娠中絶」と「離婚」に対する寛容度が上昇
  5. 「人は人生において平等の機会を持つべきだ」と感じる人が増加

各ファインディングスの詳細

1. コロナ危機による経済や社会への、負の影響に対する不安の低下

「自分や自分の愛する人が、コロナ危機に続く不景気で苦しむことを、あなたはどのくらい恐れていますか」という質問に対し、「恐れている」と回答した人は、2020年5月調査では72.4%、2021年4月調査では63.6%と、8.8ポイント低下しました(図1)。

また、「あなたは、コロナ危機をくぐり抜けたあと、日本はひどく傷ついた状態になっていると思いますか。それとも、とても強くなっていると思いますか」という質問に対し、「ひどく傷ついた状態になっていると思う」と回答した人は、2020年5月調査では46.1%、2021年4月調査では35.2%となり、10.9ポイント低下しました。また、「とても強くなっていると思う」と回答した人の割合は、ほぼ横ばいとなりました(図2)。

以上から、2021年4月の時点では、コロナ危機による経済や社会への、負の影響に対する不安が薄らいでいたことがうかがわれます。

2. 人びとはコロナ危機下において「適切にふるまっている」が増加

「あなたは、コロナ危機の中で、日本の大多数の人はどのくらい適切にふるまっていると思いますか」という質問に対し、「適切にふるまっている※1」と回答した人は、2020年5月調査では25.8%、2021年4月調査では38.0%となり、12.2ポイント増加しました(図3)。コロナ危機の長期化により、2021年4月の時点では、感染対策の行動のルールがより多くの人びとのあいだで浸透したと受け止められていたようです。

※1 「そこそこ適切にふるまっている」「とても適切にふるまっている」と回答した人の合計

3. コロナ危機下の生活に折り合いをつけつつも、ルール遵守に疲れ

2021年4月調査で追加した、「私はコロナ危機下の生活に、とてもうまく折り合いをつけることができた」という質問に対し、「同意する※2」と回答した人は、68.6%(図4)。また、同じく新設の「私は現在のコロナに関するルールの情報を探したり、それに従ったりすることに疲れた」という質問に対し、「同意する※2」と回答した人は、57.9%となりました(図5)。2021年4月の時点では、多くの人びとがコロナ危機下の生活に順応しているのと同時に、コロナ危機下の生活に疲れを感じていたことがうかがえます。

※2 「まあ同意する」「強く同意する」と回答した人の合計

4. 「妊娠中絶」と「離婚」に対する寛容度が上昇

「妊娠中絶」を「認められるべきだ※3」と回答した人は、2020年5月調査では51.5%、2021年4月調査では58.7%と、7.2ポイント上昇しました(図6)。また、「離婚」を「認められるべきだ※3」と回答した人は、2020年5月調査では67.9%、2021年4月調査では72.8%と、4.9ポイント上昇しました(図7)。2021年4月の時点では、「妊娠中絶」と「離婚」に対して、人びとの寛容度が上がっていることがわかりました。このデータだけでは意識が変化した背景を読み解くことは難しいのですが、昨今日本でもジェンダー平等に関する議論が高まっていることから、今後の変化を注視したい調査項目です。

※3 「決して認められるべきではない」から「常に認められるべきだ」を、10段階で評価。「常に認められるべきだ」に近い、6~10と回答した人の合計

5.「人は人生において平等の機会を持つべきだ」と感じる人が増加

「すべての人が平等に扱われることを大切に思い、『人は人生において平等の機会を持つべきだ」と信じている人」にどの程度自分があてはまるかという質問に対し、「あてはまる※4」と回答した人は、2020年5月調査では75.7%、2021年4月調査では81.1%と、5.4ポイント上昇していました。年代別の割合では、30代で2020年5月調査では72.6%、2021年4月調査では79.7%7.1ポイント上昇していました(図8)。

※4 「とてもあてはまる」「あてはまる」「そこそこあてはまる」「少しあてはまる」と回答した人の合計

「コロナ危機下の価値観に関する国際調査」について

世界的に広がるコロナ危機において、各国の状況や人びとの行動や価値観の変化を探るため、「世界価値観調査」協会副会長のクリスチャン・ヴェルツェル氏が「コロナ危機下の価値観に関する国際調査」を始動させました。同調査は、イギリス、ドイツ、オーストラリアなど、15の国々でも実施されています。

日本からは、電通総研、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(横浜市港北区)の谷口尚子教授、同訪問研究員のアカリースキ・プラメン博士、名古屋商科大学ビジネススクール(愛知県名古屋市)のパク・ジュナ准教授がチームとして参加し、第1波および第2波調査を実施しました。日本での第3波調査は2022年の実施を予定しています。

「コロナ危機下の価値観に関する国際調査」の詳細は、「世界価値観調査(World Values Survey)」ウェブサイト内のページを参照。

URL: http://www.worldvaluessurvey.org/WVSEventsShow.jsp?ID=416

調査概要

コロナ危機下の価値観に関する国際調査 日本版
調査時期: 第1波 2020年5月15日~16日、第2波 2021年4月5日~19日
調査手法:インターネット調査
対象地域:全国
対象者:20~69歳の男女計3,000名(2020年5月調査より、1,882人が継続回答)
調査会社:株式会社クロス・マーケティング
※回答者の性別・年代・居住地域の分布は、国勢調査結果に合わせています。
本調査内容に関する問合せ先
電通総研 担当:中川、馬籠、山﨑
E-mail: d-ii@dentsu.co.jp URL: https://institute.dentsu.com

Text by 馬籠太郎