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「クオリティ・オブ・ソサエティ」レポート
こちらは2023年までの電通総研が公開した調査関連のレポートです。過去のレポート記事は、以下のリンクからご覧いただけます。毎年掲げるテーマに即した、有識者との対談、調査結果、海外事例、キーワードなどがまとめられています。
クオリティ・オブ・ソサエティ指標 第1回調査
サステナブルで将来に希望をもてる社会へ向けて
2021.09.07

# クオリティ・オブ・ソサエティ

# QoS指標

# 社会の健康診断


電通総研は「クオリティ・オブ・ソサエティ」を活動テーマに、社会についての人びとの意識を把握するための調査を積み重ね、電通総研ウェブサイトで発信してまいりました。
活動の一環として、2021年5月に、社会の質を構成する40の設問項目からなる第1回調査を、全国12,000名を対象に実施いたしました。
この調査結果を分析し、電通総研独自の「クオリティ・オブ・ソサエティ指標」の開発を試みました。本稿では、調査結果のサマリーとともに、指標についての考え方をご紹介しております。
また、この調査に先立って2020年12月に実施した「パイロット調査」について、別途、電通総研ウェブサイトに掲載しております。

「クオリティ・オブ・ソサエティ指標(パイロット調査)」記事はこちらからご覧ください。
クオリティ・オブ・ソサエティ指標(パイロット調査)

電通総研では今後も調査を継続することによって、「クオリティ・オブ・ソサエティ指標」の精緻化に取り組んでまいりたいと考えます。



クオリティ・オブ・ソサエティ指標とは

「クオリティ・オブ・ソサエティ指標」は、サステナブルで将来に希望をもてる社会であるかどうかを測るために、電通総研が独自で作成した指標で、以下4つの視点から構成されます。

1.生活や社会についての「実感」

生活や社会についての「実感」
生活や社会についての「実感」

2.「社会の質」についての「評価」

「社会の質」についての「評価」
「社会の質」についての「評価」

「社会の質」に関する設問項目
●社会のベース
・社会、経済的安定
・次世代の育成
・災害などのリスクへの対応
・国が復興・復旧する力

●社会関係資本
・家族以外の人的信頼関係
・他者への信頼感
・互助の精神

●インクルージョン
・機会の平等
・多様性の尊重
・自分と異なる人に対しての寛容性
・子どもの権利

●社会の活力
・失敗の許容、再チャレンジ可能
・社会変革の有効感 ※目的集団レベルと個人レベル
・社会、経済の活力

3. DX有効感について

DX有効感について
DX有効感について

4.選好する社会像について

選好する社会像について
選好する社会像について


1.生活や社会についての「実感」

「日本には不安がない」15.0%、「日本には余力がある」21.3%、「日本には希望がある」32.3%

「余力」「希望」に関しては、2020年12月に実施したパイロット調査よりも低い結果でした。
希望をもてる社会の構築に向けて、どうすれば「安心」「余力」「希望」のよい循環を生み出すことができるのか、ヒントを探っていきたいと思います。

生活や社会についての「実感」
生活や社会についての「実感」

※2020年12月に実施したパイロット調査(参考値)
「これからの社会に不安がない」12.8%、「日本には余力がある」31.2.%、「これからの社会に希望がある」37.4%



2.「社会の質」についての「評価」

社会的リスクに備えると同時に、レジリエンシーを高める

10年後「社会的リスクに対して十分な対応が整っている」と予想した人は39.5%でした。今後いつ起こるかわからない自然災害や感染症、サイバーテロなど、社会的リスクへの対策を進めるとともに、その対策内容について人びとと共有していくことが、国や自治体、企業や組織に求められています。
また、2020年12月に実施したパイロット調査でも「社会的リスクへの脆弱性」への意識が高かったことを踏まえ、今回の第1回調査では「レジリエンシー」に関する設問を追加しました。「現在」「10年後」ともに過半数が「日本は、社会や経済が大きなダメージを受けても復興・復旧する力がある」と回答しています。予測困難な時代では、さまざまな社会的リスクに備えると同時に、社会がたとえダメージを受けてしまったとしても、迅速に回復できるシステムを整備することが急務であり、引き続き注目したい項目です。
またその他に、パイロット調査で「希望をもてる社会」へ向けて大切なキーワードであることがわかった「他者への寛容」「インクルージョン」は、現在の評価が40%前後で、10年後の予想では増加していますが、今後も人びとの意識変化を追いかけていきたいと思います。

生活や社会についての「実感」
生活や社会についての「実感」
生活や社会についての「実感」
生活や社会についての「実感」


3.DX有効感について

年代別で生じている、DXの光と影

今後の社会変革へ向けて、DX(デジタル・トランスフォーメーション)は有効な手段の1つと期待されています。パイロット調査では、DX関連における「希望をもてる社会」へ向けた大切なキーワード「デジタル化による教育機会の拡大、不平等の解消」「人間性」でした。
今回の第1回調査では、10年後は、現在よりも「デジタル化によって、教育機会が拡大し、不平等が解消されている」(+14.7ポイント)と人びとが期待していることがわかりました。
また、注目したいのは、年代別の結果です。「デジタル化による教育機会の拡大、不平等の解消」は、18-29歳のスコアがもっとも高く、年代が上がるにつれて低くなっています。「デジタル化によって人間性が損なわれている」については、18-29歳のスコアがもっとも低く、年代が上がるにつれて高くなりました。30代以上の全ての年代で、過半数が「デジタル化によって、人間性が損なわれている」と回答しています。
あらゆる課題をDXで解決しようとするのではなく、人間性重視の視点に立ち、あくまで手段の1つとしてDXを有効活用していく必要があるのではないでしょうか。

DX有効感
DX有効感
DX有効感(現在について)
DX有効感(現在について)


4.選好する社会像について

どうすればよりよい未来社会を実現することができるか

脱炭素化が世界の潮流になり、日本でもカーボンニュートラルを社会経済の基盤強化につなげようとする動きもある中、86%の人びとが「経済力の維持と環境問題の解決の両立」を志向していることがわかりました。
また、コロナ危機の影響もあり、出生数の減少が加速していますが、人びとは、人口減少を前提とした社会のあり方を考える必要性を感じている(86.3%)ようです。
そして、およそ7人に1人の子どもが相対的な貧困状態にある現在の日本社会において、多くの人が「日本は、子をもち、育てやすい社会を目指すべきだ」(91.7%)と考えていることもわかりました。ただし、これに関しては、「日本は、子をもち、育てやすい環境が整っている(「社会の質」への人びとの「評価」)」と回答した人は34.5%となっており、「選好する社会像」と、現在の「社会の質への評価」には大きなギャップがあることも明らかになりました。
どうすればよりよい未来社会を実現できるのか、人びとが「選好する社会像」と、現在の「実感」や「評価」との比較などから、今後もヒントを探ります。

選好する社会像について
選好する社会像について
選好する社会像について
選好する社会像について


さいごに

前回パイロット調査を実施した2020年12月時点から「余力」「希望」のスコアが下がっており、人びとはまだ多くの不安を感じていることが明らかになりました。10年後の予想についても、前向きな見通しが立っているとはいいがたい結果です。
電通総研では、今後も「クオリティ・オブ・ソサエティ指標」を継続し、人びとの意識変化を捉えながら、経済成長だけではなく、社会の健全性、余力、レジリエンシーなどを注視することで、サステナブルで希望をもてる社会を実現するためのきっかけを掴みたいと思います。

「クオリティ・オブ・ソサエティ指標 第1回調査レポート(サマリー)」はこちらからご覧いただけます。
クオリティ・オブ・ソサエティ指標 第1回調査レポート(サマリー).pdf

※この他、性・年代・地域別や、項目間相互の関連性を分析したレポートもご用意しております。 ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

*1 「クオリティ・オブ・ソサエティ指標」調査の設問項目

1.余力 2.希望 3.安心 4.社会のベース 5.社会関係資本 6.インクルージョン 7.社会の活力 8. DX有効感 9.次世代 10.環境 11.レジリエンシー 12.国際協力 13.統治システム 14.行政改革 15.社会費用負担 16.機会の平等 17.人口減少社会 18.他者への寛容


*2 「クオリティ・オブ・ソサエティ指標」4つのスコアについて

1.生活や社会についての「実感」
「余力」は、電通総研が2020年に発表した「日本の潮流 SSXで創る『余力社会』という未来へ 実現に向けた20のKeywords」の中で取り上げたキーワードです。今後、日本がさまざまな課題に取り組んでいくためには、「余力」を備えることが大切という考えに基づき設定(クオリティ・オブ・ソサエティとSSX 電通総研ウェブサイトのコンテンツのご紹介)しています。 「希望」「安心」は、「希望学」を専門とされている東京大学の玄田有史教授と電通総研谷尚樹所長の対談(「職業、動く。」対談 玄田有史×谷尚樹 仕事は苦しい。だから楽しい。壁にぶつかる時に考えること)をきっかけに、これからの不確実性の高い社会において、人びとが「生きがい」を実感するうえで、この2つが重要な指標になると考え設定しました。
2.「社会の質」についての「評価」
ピーター・ヘルマンなど有識者による「社会的質」に関する先行研究を参照しながら「社会の質」を構成する4つの要素を電通総研でオリジナルに定義しました。
3.DX有効感について
今後の社会変革へ向けて、人びとがDXを有効な手段の1つとして実感できているかどうかを測るために設定しました。電通総研は、AI時代の人間社会はどのようなものであるべきかという課題に対して、人を中心に考えること、すなわち健全な社会を構築するためには「人間性重視」の視点が大切ではないか、というメッセージを発信しています(人と社会の変容に着目し、これからを探るメディアに)。
4.選好する社会像について
現在、人びとがどのような社会を志向しているのかを把握するための項目です。また、「生活や社会についての『実感』」や「『社会の質』についての『評価』」などとの関連性を分析することで、サステナブルで将来に希望をもてる社会像のヒントを捉えます。


調査概要

●クオリティ・オブ・ソサエティ指標(第1回調査)
調査時期 :2021年5月6日~10日
調査方法 :インターネット調査
対象地域 :全国
対象者  :18~79歳の男女 ※高校生を含む
サンプル数:12,000名(都道府県×性年代の人口構成比に合わせて回収)
業種排除 :なし
調査会社 :株式会社電通マクロミルインサイト
※調査結果の各割合は回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値が必ずしも100%にならない場合があります。

本調査内容に関する問い合わせ先

電通総研 担当:山﨑、吉田、日塔、馬籠
E-mail:qsociety@dentsusoken.com
URL:https://qos.dentsusoken.com

Text by 吉田 考貴



吉田考貴 よしだ・こうき

電通総研アソシエイト・プロデューサー

1981年宮崎県日向市生まれ。2017年株式会社電通九州に入社、プロモーションデザイン局に所属。2020年2月より電通総研。主な活動テーマは少子高齢、人口減少社会における「地域」や「教育」のあり方。

1981年宮崎県日向市生まれ。2017年株式会社電通九州に入社、プロモーションデザイン局に所属。2020年2月より電通総研。主な活動テーマは少子高齢、人口減少社会における「地域」や「教育」のあり方。