電通総研

JP EN
クオリティ・オブ・ソサエティ指標英国版
英国の人びとの社会に対する意識と日本との比較

電通総研は2021年6月、英国在住の2,000名を対象に、人びとの社会に対する意識について40の設問項目からなる調査を実施いたしました。本調査は、2021年5月に日本で実施した「クオリティ・オブ・ソサエティ指標 第1回調査」と同一の質問票を英語に翻訳し、実施したものです。電通総研では、日本と英国の調査結果をもとに、両国の人びとの意識を比較・分析いたしました。この記事では、英国での調査結果を概観するとともに、日本の調査結果と比較し、日本と英国の人びとの社会に対する意識の類似点と相違点をまとめてみました。

日本において2020年12月に実施した「パイロット調査」と2021年5月に実施した「クオリティ・オブ・ソサエティ指標 第1回調査」については、別途、電通総研ウェブサイトに掲載しております。

クオリティ・オブ・ソサエティ指標(パイロット調査)
クオリティ・オブ・ソサエティ指標 第1回調査
※クオリティ・オブ・ソサエティ指標の定義については、第1回調査の記事をご覧ください。

英国の人びとの自国の社会に対する意識

1.生活や社会についての実感と期待

不安、余力、希望について、英国の人びとの実感は以下のような数値となりました。英国では、10年後の「不安」が現在より6.9ポイント低く、10年後の「余力」は現在より10.1ポイント高いという結果になりました。

2.「社会の質」に対する評価と期待

自国の社会の質については、英国の人びとの現在の評価と10年後への期待が、大きく違わない結果となりました。一方、日本では、「社会のベース」、「インクルージョン」、「他者への寛容」に関する質問について、10年後の期待の方が現在の評価よりも数値が高くなっています。

3.DX有効感

社会におけるデジタル・トランスフォーメーションの有効性について、英国では、6割程度の人びとが、現在も、10年後も、「デジタル化により格差が拡大し、人間性が損なわれている」と考えているという結果となりました。反面で、6割程度の人びとが、「デジタル化によって、暮らしが豊かになっている」とも感じているようです。この2つの質問については、日本でも同じような結果となっています。

両国の違いが顕著だったのは、現在「デジタル化によって、教育機会が拡大し、不平等が解消されている」という質問についてで、「そう思う」または「ややそう思う」と回答した人の割合は、英国67.6%、日本26.8%。英国が40.8ポイント高くなりました。英国においては、デジタル化によって教育機会の不平等を解消する効果があると実感している人が多いようです。

4.選好する社会像

人びとがどのような社会を志向しているのかを把握するための20の質問のうち、9問については英国と日本との差が5ポイント以下であり、選好する社会像に共通点が多くあることがわかりました。たとえば「子どもを生み、育てやすい社会を目指すべき」(日本91.7%、英国82.1%)は、日英どちらも同意する人の割合が多い社会像です。しかし、「子をもち、育てやすい環境が整っている」と思う人が英国は76.9%であるのに対して、日本は34.5% と大きな乖離があります。英国と比べると、子育ての現実の環境について日本の人びとが理想との大きなギャップを実感していることがわかりました。

また、英国と日本で結果が大きく異なっていたのは、「一極集中型社会を目指すべきだ」(英国 51.9% 日本 23.7%)、「人口が減ることを前提に社会のあり方を考えるべきだ」(英国 57.4% 日本86.3%)、「人口を維持するために、移民を受け入れるべきだ」(英国53.4% 日本29.3%)といった項目です。これらの項目における違いの要因は、人びとの意識の違いというよりは、両国の都市構造や人口の流動性などの社会背景が異なるためではないかと考えられます。

日本と英国の類似点

【類似点①】他者への信頼感が高い

現在および10年後の自国について「他者への信頼感が高い社会」であるかどうかを聞いた質問に対して、日本では53.8%、英国では56.7%と、両国とも5割以上の人びとが「そう思う」もしくは「ややそう思う」と回答しています。

【類似点②】経済成長と環境問題の解決の両立を志向

自国の目指すべき方向性についての質問においては、以下の項目で、類似の数値になりました。日本、英国ともに、経済成長と地球環境問題の解決の両立を望んでいる、という結果となりました。

日本と英国の相違点

【相違点①】もっとも大きな差は、人びとが感じる社会や経済の活力

日本と英国の調査結果で、回答の差がもっとも大きかったのは、現在の自国の「社会や経済には活力がある」という質問です。「そう思う」または「ややそう思う」と答えた人の割合は、日本が22.8%、英国が71.6%で、英国が48.8ポイント高くなりました。

また、10年後の自国の「社会や経済には活力がある」という質問では、日本30.5%、英国72.8%となりました。英国は現在の実感とほぼ変わらないのに対し、日本は7.7ポイント高く、10年後の期待が現在よりも高いという結果になりました。

【相違点②】人的、財政的な余力への実感や期待にも大きな差

活力に次いで日本と英国の差が大きかったのは、10年後の「自国には人的、財政的な余裕(余力)がある」についての質問です。「そう思う」または「ややそう思う」と答えた人の割合は、日本が23.1%、英国が70.4%で、英国が47.4ポイント高くなりました。

一方、現在、自国には「人的、財政的な余裕(余力)がある」という問いに対しては、日本21.3%、英国60.4%でした。日本が現在と10年後であまり変わらないのに対し、英国においては、10年後に対する期待が10.1ポイント高くなっています。

以上のように、日本においては現在や10年後の社会に活力や余力があると考える人の割合が、英国に比べて著しく低くなっています。特に余力に関しては、10年後への期待も現在と同様の低い数字になっており、日本の人びとが将来に対する明るい展望をもちづらい状況にあるようです。

余力のとらえ方は、人によってさまざまであると思います。第7回世界価値観調査の日本調査(2019年)においては、「働くことがあまり大切でなくなるのは良いこと」と回答した割合が、前回調査(2010年)よりも5ポイント増加しました。働いて経済的な余力をつくるのではなく、「自分の中で働くことのプライオリティを見直す」ことによって心や時間の余力をつくる、といった発想の転換が始まっているのかもしれません。今回の英国調査との比較によって、日本の人びとの心象風景がより鮮明に浮かび上がってきたように思います。

さいごに

全体を通して英国の人びとは日本の人びとに比べて、自国の社会の質への評価が高い傾向がみられました。特に、自国の社会・経済の活力と、人的・財政的な余力に対する実感や評価には、大きな差があることがわかりました。他方、選好する社会像が似ているなど、両国の人びとの間の類似点も多くありました。

異なる社会の人びとの意識を比較することは、日本社会を相対的に眺める機会となり、そこから自らの社会の将来について考えるヒントを得ることができるように思います。 電通総研では、人びとが希望をもてる社会の実現につながるよう、「クオリティ・オブ・ソサエティ指標」調査を継続し、人びとの意識変化を捉えてまいりたいと思います。

◎「クオリティ・オブ・ソサエティ指標英国版 第1回調査レポート(サマリー)」はこちらからご覧いただけます。

クオリティ・オブ・ソサエティ指標 日英比較レポート(サマリー).pdf

※この他、性・年代・地域別や、項目間相互の関連性を分析したレポートもご用意しております。 ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

調査概要
タイトル :「クオリティ・オブ・ソサエティ指標2021英国版」
調査手法 :インターネット調査
調査時期 :2021年6月8日~18日
対象地域 :英国全域
対象条件 :18~79歳の男女 ※高校生を含む
サンプル数:2,000ss
England(North East, North West, Yorkshire and The Humber, East Midlands, West Midlands, East, London、South East, and South West), Northern Ireland, Scotland, Wales
業種排除 :なし
調査会社 :株式会社電通マクロミルインサイト

※調査結果の各割合は回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値が必ずしも100%にならない場合があります。
本調査内容に関する問合せ先
電通総研 担当:山﨑、馬籠、中川、木村
E-mail: d-ii@dentsu.co.jp
URL: https://institute.dentsu.com


馬籠太郎 まごめ・たろう

電通総研プロデューサー

1982年鹿児島県生まれ。複数の広告代理店を経て、電通デジタルでSNS広告運用を中心にツールのディレクションなどをおこなう。2020年2月より電通総研。主な活動テーマは、データに基づく次世代社会の分析。

1982年鹿児島県生まれ。複数の広告代理店を経て、電通デジタルでSNS広告運用を中心にツールのディレクションなどをおこなう。2020年2月より電通総研。主な活動テーマは、データに基づく次世代社会の分析。

木村亜希 きむら・あき

電通総研プロデューサー

東京都生まれ千葉県育ち。東京大学文学部歴史文化学科日本史学専修課程卒。TCC(東京コピーライターズクラブ)会員。2005年より電通、2020年2月より電通総研。主な研究テーマは次世代の教育と地域。

東京都生まれ千葉県育ち。東京大学文学部歴史文化学科日本史学専修課程卒。TCC(東京コピーライターズクラブ)会員。2005年より電通、2020年2月より電通総研。主な研究テーマは次世代の教育と地域。

中川紗佑里 なかがわ・さゆり

電通総研プロデューサー

奈良県生まれ。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ卒。2020年2月より電通総研。世界価値観調査、コロナ危機下の価値観に関する国際調査を担当。主な活動テーマは、ジェンダー、ウェルビーイング、気候変動。

奈良県生まれ。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ卒。2020年2月より電通総研。世界価値観調査、コロナ危機下の価値観に関する国際調査を担当。主な活動テーマは、ジェンダー、ウェルビーイング、気候変動。