わずかな助成金が、
ミニシアターの灯をつなぐ
CNCやKOFICは映画館に対してはどのような助成をしているのですか。
基本的には映画の製作助成が一番大きいのですが、アート系映画館に対しても助成金を出しています。フランスでは、通常1館あたり年間180万円程度※6の小さな助成だそうです。1人分の人件費、それもバイト代ぐらいにしかならないかもしれないけれど、それが決定的に大きい。ミニシアターは館主の情熱でもっているところが大きいので、それを引き継ぐ人を育てていけるぐらいの、ほんの少しのお金がとても大切なのです。
また、どの映画館に助成をおこなうかは、ポイント制※6で決めるそうです。一番重視されるのは、上映作品の多様性。例えば何か国の映画をやっているとか、年間何本やっているとか、よそでやってない映画が見られるとか、そういったことを評価します。フランスであれば、フランス映画が何%以上あるか、アメリカ映画「以外」の映画が何%以上あるといったことを見られます。他にはトークショーの回数など、シネコンにはできないことを評価します。
さらに、助成するに値する映画館だとCNCが認めたところには、「アート系映画館」(Cinéma d’Art et Essai)のロゴマークの入ったシールが入り口に貼ってあるんです。そうすると、映画館にとってはステータスになるし、それに恥じないプログラムを上映しないといけないと張り合いも出る。観客もそこに行けばいいものが見られると信用できる。そういう映画館がフランス全体で1,200館ほどあり、年に約20億円の助成金が出ています。
なるほど、映画の多様性を守る工夫が、誰にでも分かる形でなされているのですね。
そうですね。日本では最近、邦画が強いですが、長い間洋画が強かった。1970年から2000年ぐらいまでは、洋画の興行収入が60~70%を占めていた。しかも、洋画の収入の約9割はアメリカ映画なんです。アメリカ映画が強いのは、他の国も同じです。
だから、興行収入の一部、つまりアメリカ映画からの収入を、自国の映画製作にまわすフランスや韓国のやり方は、ある意味で非常に保護主義ではあります。ただ、それによって映画の多様性を守っているのです。