フランスの労働生産性はG7加盟国で トップ。「より早く」「より短く」 そして「より多く」
作成:Nagata Global Partners 日本では、いわゆる「失われた30年」の議論の中で、企業の成長や労働者の賃金・生産性が停滞しているといわれます。その一方、長時間労働が問題視されるようになり「働き方改革」の取り組みが高まりました。電通総研が実施している「世界価値観調査」でも、仕事よりも余暇を重要視する結果です※9 。フランスは経済が成熟するヨーロッパの中でもバカンスのイメージが強く、日本がいま向かっているトレンドの先にいるのかもしれませんがいかがでしょうか?
フランス人の働き方の特徴は、「生産性」と「ウェルビーイング(Bien-être)」です。この二つを企業のトップから新入社員まで、全員が意識しています。「ウェルビーイング」は、先進国はどこでも同じ流れだと思いますが、フランスは「時間当たりの労働生産性」がトップクラスです。上のグラフでは2019年時点で米国を抜いてG7で一番になっています。
「時間当たり」というのは分母が「時間」なので、全労働時間が短くなると当然高まります。フランスは短く働くので、国内総生産が伸びなくても生産性は高くなっていく構図です。アメリカは結構長く働きますが、働く時間を短くしようというのがヨーロッパです。「自分の時間を大切にして人生を謳歌したい」という価値観で、バカンスは仕事と切り離された自分の自由に動ける時間です。また合理的思考で、「長時間労働は生産性にしても、人や会社の健康にとっても良いことがない」と考えています。あとフランス人は「やった感」が欲しい。つまり集中的にガーッとやって結果を出して、より多く稼いだほうが、だらだらやるよりも充実感が高まります。どこが日本と違うかというと、社長もこれらの価値観を大事にしています。トップがそうなので、当然、社員も遠慮しません。
「ウェルビーイングを重視して労働時間を減らしながら生産性を上げる」といういまの日本の課題解決へのヒントがありそうです。しかし、どのようにして仕事を早く、短くしているのでしょうか?
私が11項目にまとめたものがあるので、こちらをご覧ください。
① 自分が納得した必要なことだけする ⇒ジョブ型雇用によるタスクの明解性② 自分の得意な(だと思う)ことだけする ⇒ジョブ型雇用による専門性③ 上司や関係者に「お伺い」をたてない ⇒ジョブ型雇用による自己裁量④ 上司や関係者を、察しない、忖度しない ⇒コンテンツコミュニケーション、合理的思考⑤ 楽に儲かることを優先する ⇒合理的思考⑥ なぜ?を理解してから取り掛かる ⇒合理的思考、演繹的思考⑦ 根回しや稟議取りをしない ⇒会議は議論と決断の場(報・連・相の場ではない)⑧ 周到な計画をせず、まず走る ⇒ジョブ型雇用、成果主義、ポリクロニック (結果を優先し、複数のタスクを、状況の変化に応じ、臨機応変に行う)※10 ⑨ パワポに時間かけない ⇒合理的思考(要は相手に印象深く伝わればいい)⑩ お客さんに余計な時間を費やさない ⇒お客様は神様ではなく購入者⑪ プライベート時間を充実 ⇒よく寝る、趣味・スポーツ、家族
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基本的に考え方が合理的です。それと、日本とは「権利」と「義務」の考え方に違いがあります。例えば20日の有給休暇があれば「権利」なので当然のこととしてすべて使います。「義務」は労働契約書の中に書いていないことはやらない。上から命令されてもやらない。つまり権利・義務の概念のしっかりした考えと合理的な考え。この2つからこういう行動が起きてきます。
タスクが明確でプロセスを任せているから、タスクが達成されればやり方は合理的に早くやってくれればよい。それがさばける人にしか頼まないし雇用していない、ということですね。
はい、「あなたはこれをする人でこんな責任があります。こんな権限があります。それをやってください」という労働契約書がすべてです。だから、それに従うだけなのです。やり方まで労働契約書には書いていないので、自分で合理的だと思う方法でやればいい。日本の場合、マイクロマネジメントという言い方があって細かいやり方まで全部管理されて、そこから外れると怒られて、というのがありますよね。それはフランス人には全く無理です。プロセスに対する考え方が違い、自分が考えるものなのです。