電通総研

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クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査2021
社会に関する人びとの意識・価値観の現在地

電通総研と電通未来予測支援ラボは、東京経済大学・柴内康文教授の監修のもと、「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査2021」を、2021年10月に日本全国12,000名を対象に実施しました。「クオリティ・オブ・ソサエティ調査」は、社会に関する人びとの意識・価値観を把握することを目的として2019年12月に第1回調査を開始して以来、年に1回実施しており、今回で3回目となります。

今回の調査の設問は35項目355問に及びます。なお、前回(2020年11月実施の第2回)から社会情勢の変化に応じて355問中59問に追加や変更を加えています。

第3回の調査結果は、「ウェブ電通報」の連載記事でもさまざまな切り口で分析(以下、各記事へのリンク)。

本記事では、2019年から2021年の3年間を通じて変化した項目の中から特徴的なものをいくつかピックアップして取り上げ、あわせて本調査全体のレポートを公開いたします。

◎「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査 第3回調査レポート」はこちら。
クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査 第3回調査レポート.pdf

この3年間で変化した項目

1.「高所得者」と「低所得者」、「都市」と「地方」などの間で、「わだかまり」が減少傾向

「現在の日本社会において、以下にあげる【グループ】や【属性】は、お互いに共感・尊重し合えていると思いますか」という質問に対し、「お互いに共感・尊重し合えていると思う」から「お互いにわだかまりがあると思う」までを5段階で回答する設問で、全体的に「わだかまり」が減少しています。一番「わだかまりがある」のは【高所得者】と【低所得者】で、2019年には71.3%でしたが徐々に下がり、2021年には68.4%と2.9ポイント減になっています。その他の属性での「わだかまり」を見ていくと、【会社経営層】と【一般の社員】は、2019年56.4%から2021年51.9%で4.5ポイント減、【都市】と【地方】は、2019年48.5%が2021年41.3%で7.2ポイント減と大きく下がっています。

2.自分が所属する社会階層として「中の中」が増加傾向

「現在の日本の社会全体が、以下の階層に分かれるとすれば、あなた自身は、どれに入ると思いますか」という質問に対し、「上の上」から「下の下」までの9段階に「わからない/答えたくない」を加えた10個の選択肢から一つ選ぶ設問があります。「中の中」と回答した比率が過去3回通じて最も高く、さらに2019年の24.7%が2021年には27.8%となり3.1ポイント増加しています。電通総研が実施する「世界価値観調査」(※)においても、1990年から長期でみると中流意識は薄れてきた一方で、2019年から2020年の短期の変化では「中の中」が増加しており、本調査の結果と整合します。世界では経済格差の拡大が課題となっているなか、意識変化としては特徴的です。

※「世界価値観調査」の2020年調査結果は、こちらの「コロナ危機を経て変化した日本の価値観」に掲載されているPDFレポート参照。レポートP5で類似設問の1990年から30年間の時系列変化のグラフを見ると「中の中」の比率が1990年の56.3%から徐々に下がり、2019年は42.2%で約30年の間に14.1ポイント減少した。しかし、新型コロナ発生後に実施した2020年は48.1%で5.9ポイント増加し、1年間の意識変化としては大きいものとなった。なお世界価値観調査では階層意識を5段階で聞いているため「中の中」の比率がより大きく出ている。

3.「ボランティア」に関する行動や意識が減少傾向

さまざまなボランティア活動(※)に対して「1年以内に参加したことがある」「参加したいと思う」「社会に必要だと思う」で当てはまるものを選ぶ設問の結果をご紹介します。こちらは2回目からの実施のため2年間の変化ですが、全体的に減少傾向がみられました。「1年以内に参加したことがある」で一番多いのは「地域の祭りや行事への協力・ボランティア」で、2020年の9.5%が2021年は6.3%になり、3.2ポイント減。「参加したいと思う」のは同じく「地域の祭りや行事への協力・ボランティア」で、2020年13.1%に対して2021年は11.9%で1.2ポイント減。「社会に必要だと思う」のは「地域の防災活動・ボランティア」で、2020年39.1%が、2021年36.6%と2.6ポイント減になりました。

※本記事ではボランティアに関連するものを取り上げているが、その他の選択肢も含めた結果はこちらのレポートP29参照。例えば「クラウドファンディング」「社会課題についてのSNSを通じた情報拡散」の選択肢があり、この二つに関しては有意差がある変化はみられなかった。

4.「社会について考えること」が「増えた」との回答が減少傾向

自分自身の生活環境に関する10個の項目について「1年前と比較して増減をお知らせください」と聞く質問で、「増えた」と回答した比率が高いのは「自宅で過ごす時間」「自分の将来について考えること」「社会について考えること」の3つでした。「自宅で過ごす時間」が増加した人の比率は2020年61.9%に対して2021年59.3%で2.6ポイント減、「自分の将来について考えること」は2020年50.0%が2021年46.7%で3.3ポイント減、「社会について考えること」は2020年47.1%が2021年41.8%で5.3ポイント減となりました。「増えた」とする人は比較的多いものの前年比では減少し、特に「社会について考えること」にその傾向が顕著でした。

調査結果についてのまとめ

1で示した異なる所属やグループ間でのわだかまりの低下は、はたして社会的寛容性やダイバーシティを尊重する意識の高まりを反映しているのか、興味深いところです。もしくは2で見た通り、自らの中流意識が高まっていることから、差異自体への関心が薄れているのかもしれません。3ではボランティアの行動や意識が低下していること、4では社会について考えることが2020年と比べると落ち着いていることを取り上げました。

過去3回の調査時期は1回目が新型コロナウイルス感染症流行前の2019年12月、2回目は社会活動の自粛ムードが色濃い2020年11月、3回目はコロナ感染者数が一次的に低下した2021年10月でした。新型コロナウイルスは人びとに大きな意識変化を生み出しましたが、その変化はまだ途上にあります。本調査の結果だけでは変化の要因は特定できませんが、例えば1と2の変化は、あらゆる階層に「平等」に降りかかった厄災を前にして、特権意識や階層意識が薄れたのかもしれません。また相対的に自分の環境が恵まれていることに気がついて中流意識が向上したのかもしれません。3と4の変化は、コロナによって社会を優先する行動制限が長引いたことがボランティア活動や社会貢献に対する意識低下につながったのでしょうか。今後もこれらの意識変化に注目していきたいと思います。

なお本記事で扱った項目はごく一部にすぎないため、その他の項目に関してはこちらのレポートをご参照ください。

*グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。また、各割合を合算した回答者割合も、全体に占める合算部分の回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値と必ずしも一致しない場合があります。
*12,000サンプルの標本サイズの誤差幅は、1.96×0.5*0.5/109.544=0.9/100となります。よって過去調査との比較で±1ポイントの差があれば有意な差があるとみなされます。

調査概要

●「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査」
調査時期 :第1回 2019年12月11日~18日、第2回 2020年11月11日~17日、第3回 2021年10月19日~28日
調査手法 :インターネット調査
対象地域 :全国
対象者    :18~74歳の男女計12,000名
調査会社 :株式会社電通マクロミルインサイト
本調査に関する問合せ先
電通総研 担当:山﨑、日塔
E-mail: d-ii@dentsu.co.jp
URL: https://institute.dentsu.com
未来予測支援ラボ 担当:小椋、立木、小野、千葉
E-mail: future@dentsu.co.jp
URL: https://www.dentsu-fsl.jp

Text by 日塔 史
Photograph by Tabea Schimp on Unsplash



日塔史 にっとう・ふみと

電通総研プロデューサー

山形県生まれ。2020年2月より電通総研。現在の活動テーマは「次世代メディアとコミュニケーション」。経済学・経営学のバックグラウンドと、マスメディア・デジタルメディア・テクノロジー開発での実務経験を活かして、マクロ視点からコミュニケーションのメガシフトを研究する。

山形県生まれ。2020年2月より電通総研。現在の活動テーマは「次世代メディアとコミュニケーション」。経済学・経営学のバックグラウンドと、マスメディア・デジタルメディア・テクノロジー開発での実務経験を活かして、マクロ視点からコミュニケーションのメガシフトを研究する。