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「クオリティ・オブ・ソサエティ」レポート
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電通総研コンパスvol.8
ジェンダーに関する意識調査(2022年)

電通総研は、「クオリティ・オブ・ソサエティ」の活動の基盤として、「人びとの意識の変化がどのような社会を形づくっていくのか」を捉えるため、「電通総研コンパス」と称した定量調査を実施しています。第8回の今回は、2021年に実施した電通総研コンパス第6回の継続調査として、全国18~79歳の計3,000名を対象に、ジェンダーに関する人びとの意識について調査をおこないました。

◎レポート詳細はこちらからご参照ください。
【電通総研コンパス第8回調査】ジェンダーに関する意識調査.pdf

調査結果

  1. 社会全体で「男性の方が優遇されている」66.8%

社会全体で男女は平等になっていると思うか尋ねたところ、全体の66.8%が「男性の方が優遇されている」と回答しました。その他、「男性の方が優遇されている」が半数を超えたのは、上から順に「国会・議会などの政界」83.9%、「慣習・しきたり」73.2%、「職場」57.7%、「法律・制度」51.6%となりました。一方、「平等」が半数を超えたのは「学校」74.5%のみでした。

2. 「家庭」のジェンダー平等感には、男女で30.6ポイントの開き

「男性の方が優遇されている」の回答率について、男女差がもっとも大きいのは「家庭」で、30.6ポイントの開きがありました。2021年調査の21.2ポイントと比べ、男女で意識の差がさらに広がる結果となりました。

3. 「性別による差別をなくすためには教育が重要だ」86.1%

「性別による差別をなくすためには教育が重要だ」と思うかどうか尋ねたところ、「そう思う」または「ややそう思う」と答えた人の割合は、86.1%と非常に高くなりました。また、「小・中学校の年齢で十分な性教育を受けることが必要だ」についても、「そう思う」と「ややそう思う」を合わせると87.9%とかなり高く、教育に対する期待の大きさが感じられる結果となりました。

4. 「日本では外見の美しさが重要視されすぎている」72.0%

「ルッキズム」に対する関心の高まりを受けて、2022年調査では「日本では外見の美しさが重要視されすぎている」かどうかを問う質問を設けました。その結果、「そう思う」または「ややそう思う」と答えた人の割合は72.0%となりました。性・年代別で見ると、18~29歳女性が81.9%、60~69歳女性が83.4%、70~79歳女性が81.4%と、若年と高齢の女性で高くなる傾向がありました。

5. 「ジェンダー」という言葉の認知は、67.5%

「ジェンダー」という言葉について、「内容まで知っている」もしくは「内容までは知らないが、言葉だけは知っている」という人の割合は、回答者全体で67.5%でした。また、女性の方が男性よりも、言葉の認知がやや高い結果になりました。

6.「緊急避妊薬の薬局販売」に「賛成」が、昨年から10.7ポイント増加

「緊急避妊薬の薬局販売」に「賛成」または「どちらかといえば賛成」と回答した人の割合は68.7%となり、2021年の57.9%から10.7ポイント増加しました。政府で議論が繰り返されるなか、人びとの賛成の声は7割に近づいています。

7. 日本初の女性の内閣総理大臣が誕生するのは、「16.9年後」と予想

「日本初の女性の内閣総理大臣が誕生する」のは今から何年後になるか予想を尋ねたところ、回答者の平均は「16.9年後」となり、2021年調査の「27.9年後」から大きく縮まりました。また、「国会議員の女性比率が50%になる」のは「26.4年後」(2021年調査「33.5年後」)、「企業の管理職の女性比率が30%になる」のは「20.7年後」(2021年調査「24.7年後」)と、それぞれ縮まりました。

考察とまとめ

2022年7月、世界経済フォーラムから2022年のジェンダー・ギャップ指数が発表されました。日本は146か国中116位と、2021年の120位から順位は上がったように見えるものの、ジェンダー平等の達成度を数値化したスコアは、2021年の0.656から2022年は0.650と後退しています(1をジェンダー平等が達成された状態とする)。その結果と呼応するかのように、人びとの現状に対する評価も2021年から好転することはなく、よくなっているという実感は得られていないようでした。

一方、ジェンダー平等の達成を促進するための個別の施策に賛成する人の割合は、少しずつではありますが、着実に増えています。また、女性初の内閣総理大臣の誕生や、国会議員や企業の管理職の女性比率の上昇に関する人びとの予想は、昨年より楽観的なものとなりました。与党の総裁選に女性が2名出馬したことなど、さまざまな事象から変化の予兆を感じ取っているのかもしれません。

なお、本調査では日本に根強く残るジェンダーをめぐる諸問題についての洞察を得るため、調査票では男女二元論的な表現を使用していますが、男女以外の多様な性自認をもつ人を排除する意図はありません。また、回答者をできるだけ正確な日本の縮図に近づけるため、国勢調査に基づき、日本における性別・年代の人口構成比に合わせて、回答者を割付していることから、国勢調査と同じ男女二元論的な性別区分を採用しています。回答者の性のあり方の多様性を担保しながら正確性の高い社会調査をおこなっていくことは、今後の課題としたいと思います。

*グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。また、各割合を合算した回答者割合も、全体に占める合算部分の回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値と必ずしも一致しない場合があります。

** 本調査(各3,000サンプル)の標本サイズの誤差幅は、信頼区間95%とし、誤差値が最大となる50%の回答スコアで計算すると約±2.5となります。2021年との比較で±2.5ポイント以上あるものは、有意な差があるとみなされます。

調査概要
タイトル:「電通総研コンパス」第8回調査(ジェンダーに関する意識調査)
調査時期:2022年2月15日~17日
調査手法:インターネット調査
対象地域:全国
対象者:18~79歳の計3,000名(高校生を除く)
調査会社:株式会社電通マクロミルインサイト
本調査内容に関する問合せ先
電通総研
E-mail: d-ii@dentsu.co.jp