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「クオリティ・オブ・ソサエティ」レポート
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毎年掲げるテーマに即した、有識者との対談、調査結果、海外事例、キーワードなどがまとめられています。
クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査2022
人びとの当事者意識から考える、社会課題の「自分ごと化」

電通総研では「自分ごと化の力」をキーワードに、人びとの危機に対する当事者意識、社会問題への関与度について調査をおこないました。日本在住の12,000人の回答をもとに、人びとは社会課題をどの程度「自分ごと化」しているか把握し、一人ひとりが課題解決に向けて行動を起こすための手掛かりを探ります。

本記事では、2022年9~10月に電通総研で実施した第4回目の「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査2022」のデータを使用しています。調査全体の結果は後日、電通総研ウェブサイト内で公開します。

危機に対する当事者意識

さまざまな危機が叫ばれるなか、当事者意識を持って課題解決に取り組むべき主体について、人びとはどのように考えているのでしょうか。今、実際に起きている、または起こるリスクがあると言われるさまざまな社会問題について、当事者意識を持つべき主体を「政府」「地方自治体」「企業」「NGO(非政府組織)、NPO(非営利組織)」「コミュニティ(町内会、PTAなど)」「家族・親戚」「個人」「その他」「この問題の解決に取り組む必要はない」の中から全て選択してもらいました。

1.「個人」が当事者意識を持つべきは「新たな感染症」「気候変動」「少子化による人口減少」

「個人」が「当事者意識を持つべき」とする回答率に着目すると、もっとも高いものは「新型コロナウイルス感染症以外の新たな感染症」32.0%でした。次いで多い順に、「気候変動、地球温暖化」30.9%、「少子化による人口減少」26.9%、「異常気象(巨大台風、豪雨、豪雪)」26.4%、「高齢化による介護難民・老老介護」26.0%という結果となりました。日々の生活の中で身近に感じる事柄については、「個人」が「当事者意識を持つべき」と答える人の割合が大きいことがわかります。

一方、「個人」の回答率が1割を割り込むものは、「財政赤字」6.0%、「経済の競争力低下」8.7%、「主要先進国と比較した労働生産性の低さ」9.4%でした。昨今、メディアでもよく取り上げられている「エネルギー資源の枯渇」や「食料自給率の低さ、飢餓」、「戦争、紛争、テロ」に関しても2割を切る結果となりました。

2.年代が上がるほど「政府」や「地方自治体」が課題解決の主体となることを期待
年代による意識の違いが大きく表れたものの一つは、「政府」や「地方自治体」が「当事者意識を持つべき」の回答率です。年代が上がるにつれ、「政府」や「地方自治体」が当事者意識を持つべきと思う割合が高くなっています。60代以上において「政府」に当事者意識を求める人の割合は、「一次産業の後継者不足」や「伝統文化の衰退・消失」を除きおおむね8割を上回っています(図2)。また、「地方自治体」に対しては、「高齢化による介護難民・老老介護」「伝統文化の衰退・消失」「子どもの貧困、教育機会の格差」といった課題について当事者意識を持って解決すべきだと感じる60代以上の割合が高くなっています(図3)。

3.若年層は「わからない」の割合が大きい

「わからない」と回答する人の割合についても、年代によって差が出ました。60代以上では、全項目で「わからない」が1割を下回っているのに対し、18~29歳と30代では2割前後の人が「わからない」と答えています。若年層で「わからない」という回答が目立ったものは、「一次産業の後継者不足」(18~29歳27.2%、30代22.6%)、「異常気象(巨大台風、豪雨、豪雪)」(18~29歳25.3%、30代20.2%)、「巨大地震、火山噴火」(18~29歳25.2%、30代20.3%)でした。

社会課題への関与度

次に、さまざまな社会課題に対する人びとの認識と関与意向、そして実際の関与度について見ていきましょう。さまざまな課題を提示し、それぞれに対して「解決すべき課題だと思わない」「解決すべき課題だと思うが、自ら関わりたいとは思わない」「解決すべき課題と思うし、自ら関わりたいと思っている」「その課題について自分で何か実践や対策をしている」「その課題について周りの人を巻き込んで活動している」の五つから一つだけ選択してもらいました。

1. ほぼ全ての項目で「解決すべき課題だと思う」が9割以上

「解決すべき課題だと思う」(「解決すべき課題だと思うが、自ら関わりたいとは思わない」+「解決すべき課題と思うし、自ら関わりたいと思っている」+「その課題について自分で何か実践や対策をしている」+「その課題について周りの人を巻き込んで活動している」)がもっとも高いのは、「防災・減災対策」で97.0%、次いで「食料問題・フードロス問題への対応」96.3%となりました。「ジェンダー平等の実現」を除く全ての項目で「解決すべき課題だと思う」は9割を超えており、これらの事柄が社会課題であるという認識は広く共有されていることが確認できます。

2.日々の生活に近い社会課題は、関与意向が高い

「自ら関わりたいと思う」(「解決すべき課題と思うし、自ら関わりたいと思っている」+「その課題について自分で何か実践や対策をしている」+「その課題について周りの人を巻き込んで活動している」)では、「食料問題・フードロス問題への対応」62.2%、「防災・減災対策」59.7%の順に高く、生活に直結する社会課題への関与意向の高さがうかがえました。その一方で、「地方の過疎化対策」28.8%や「ジェンダー平等の実現」31.1%については、関与意向が低くなっています。

3. 「自ら関わっている」は全体的に低く、課題認識・関与意向とギャップ

「自ら関わっている」(「その課題について自分で何か実践や対策をしている」「その課題について周りの人を巻き込んで活動している」)は「解決すべき課題だと思う」「自ら関わりたいと思う」に比べるとかなり低く、もっとも高い「感染症対策(新型コロナウイルス感染症など)」でも、22.3%にとどまりました。自ら関わっている人が1割を超えるものは、「食料問題・フードロス問題への対応」18.2%、「防災・減災対策」14.2%、「マイクロプラスチック問題への対応」11.9%となりました。生活の中で実践できるような身近で具体的な行動がメディアなどでも提示されている課題については、人びとも関与しやすくなるのかもしれません。

まとめ・考察

ここまで二つの質問の結果を通じて、危機に対する人びとの当事者意識と社会課題への関与意向と関与度を見てきました。

「個人」が当事者意識を持つべきと考える人の割合は、日々の生活に近い事柄については2~3割程度ありましたが、「政府」や「地方自治体」に比べると大幅に低くなっています。そして、若年層で当事者意識を持つべき主体が「わからない」の回答率が、他の年代よりも高いことが明らかとなりました。

また、ほぼ全ての社会課題について「解決すべき課題だと思う」が9割を超えており、課題の認識は高いことがわかりました。一方で、「自ら関わっている」は非常に低く、多くの課題で1割未満です。さまざまな社会問題や危機を解決すべきだとわかりながらも、自分ではない誰かが解決してくれるという「他人ごと化」が起きているように思われます。

今後、「自分ごと化の力」を増していくためには、「自ら関わりたいと思う」と「自ら関わっている」のギャップを埋めていくことが一つの方法として考えられるでしょう。「自ら関わりたいと思う」人の割合は、少ないものでもほぼ3割となっており、多いものでは過半数に関与意向があります。個人のレベルで実践できるような行動を示し、行動する人の裾野を広げていくことが重要だと考えます。

調査概要

●第4回「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査」
調査時期 : 2022年9月28日~10月7日
調査手法 :インターネット調査
対象地域 :全国
対象者   :18~74歳の男女計12,000名
調査会社 :株式会社電通マクロミルインサイト

Text by 合原 兆二
Photograph by Clay Banks on Unsplash



合原兆二 ごうばる・ちょうじ

電通総研 プロデューサー/研究員

1990年、大分県日田市生まれ。中央大学商学部卒業後、2013年、株式会社電通九州に入社。福岡本社営業局、北九州支社を経て、2022年4月より電通総研。各種調査のほか、「地域」「メディア」「持続可能な食文化」などをテーマに活動。

1990年、大分県日田市生まれ。中央大学商学部卒業後、2013年、株式会社電通九州に入社。福岡本社営業局、北九州支社を経て、2022年4月より電通総研。各種調査のほか、「地域」「メディア」「持続可能な食文化」などをテーマに活動。