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村田晶子氏・森脇健介氏・矢内琴江氏・弓削尚子氏
ジェンダーに関する身近な問題に気づくには
ジェンダーに関する身近な問題に気づくには
2022年8〜9月、電通総研と電通グローバル・ビジネス・センターは「チェンジメイカー調査(3か国5都市)」を実施しました。本調査では、社会や未来のための活動をする人を「チェンジメイカー」と定義し、社会変革との関係について、大規模国際イベントを開催する世界5都市において分析しました。本記事では、調査結果から社会や未来のための活動に関して東京・大阪の人びとに見られた特徴を4つ取り上げ、併せて本調査全体のレポートを公開いたします。
1.東京・大阪は働き方や子育て支援などの身近な問題への問題意識が高い。全般的に社会問題に対する活動率は低いが、改善意識は他都市より高い項目もある。
社会や未来のための活動について、「自分が中心的に動き、周囲の人に呼びかける」もしくは「日常的に参加・行動したり、情報を発信する」と回答した人の比率(以下、「活動率」)は、東京・大阪では19.0%、パリでは66.1%、北京・上海では76.6%で大きな違いがありました。Z世代※の活動率は5都市ともに全体よりも高く、世代によって活動率が違うことがわかります。一方、根本的な改善が必要だと思う社会課題については、それぞればらつきが見られます。各都市の1位の項目を見ると東京・大阪が「戦争・紛争」で52.7%、パリが「貧困」で51.9%、北京・上海が「大気汚染」で36.4%です。東京・大阪は、活動率は低いものの問題意識は高い項目が見られ、逆に北京・上海は、活動率は高い一方で問題意識は相対的に低い傾向です。
※ 区分については諸説あるが、本調査においては18〜25歳と定義。
2.東京・大阪では、社会や未来のために活動することで、半数以上が主観的幸福度の向上を実感。
社会や未来のための活動について、「自分が中心的に動き、周囲の人に呼びかける」「日常的に参加・行動したり、情報を発信する」「上記の行動を現在はおこなっていないが、過去には行なっていた」のいずれかを選択した人のうち、55.9%は行動したことにより、「自分の幸福度が高まった」と回答しました。一方で、社会や未来のための活動について、「上記の行動を行ったことはないが、今後、何らかの形で関わりたい」「上記の行動をおこなったことはなく、今後、関わる予定や意向もない」と回答した人が、もし活動したら自分の幸福度が高まるだろう、と予想したのは31.9%でした。活動前に予想しているよりも、実際活動した後は多くの人が主観的幸福度の高まりを感じていることがわかります。社会や未来のために活動することが幸福度の向上につながる可能性を示唆する結果となりました。
3.東京・大阪では若年層ほど「チェンジメイカー」への好感度が高く、関わりたいと感じている。
「『社会や未来を変えるための活動をする人』(チェンジメイカー)と聞いて、どのように感じますか」という質問に対しては、東京・大阪では過半数の54.4%が「関わりたくない」と答える結果になりました。ですが、世代が下がるほど「関わりたい」という回答が増加し、Z世代(18〜25歳)では、58.4%が「関わりたい」と回答するなど、若年層ほどチェンジメイカーとの関わりに積極的な人が多くなることがわかりました。
4.東京・大阪は一人ひとりの社会を変える力に期待する比率が6~7割と高い。
「大企業や大口の投資家」「エリート」「社会的有力者」など一部の人の力と、「市民一人ひとり」の力とでは、どちらがより社会を変えると思うかという設問では、パリ、北京・上海では3つの設問それぞれについて4割から5割が、一人ひとりの社会を変える力に期待するという結果になりました。一方、東京・大阪では6〜7割と、一人ひとりの社会を変える力に期待する人が多数を占めました。一握りの選ばれし人としてのチェンジメイカーではなく、一人ひとりの力が集積して社会を変えていくというコレクティブなチェンジメイカー像が東京・大阪の人びとの中にあることがわかります。
東京・大阪は社会や未来のための活動率は他都市に比べて低いという結果でしたが、問題意識はパリと同様に高い傾向が見られました。実際に社会や未来のために活動をしている「チェンジメイカー」に対しては、東京・大阪の Z世代は、他の世代と比べて「関わりたい」と回答した人が多い結果となりました。今回の調査結果からは、他の都市と比べると東京・大阪では社会や未来を変えようとする「チェンジメイカー」の存在そのものは少ない半面、一人ひとりの力に対する期待が高いことがわかりました。
これらのことから、実際に問題意識を行動に移したり、チェンジメイカーに関わったりすることが東京・大阪の人びとの課題と考えられます。行動するためには、一人ひとりの力に「期待」するだけではなく、それぞれが社会変革を「自分ごと化」して行動すること。それが、よりよい社会への道を開く第一歩となるのではないでしょうか。
◎詳細なレポートはこちらからご参照ください。
「チェンジメイカー調査(3か国5都市)」レポート(PDF)
Text by 若杉 茜
電通総研プロデューサー/研究員
2022年4月より電通総研。活動テーマは「ケア」「ウェルビーイング」。クリエーティブ、コミュニケーションプランニングの実務経験と人文系研究のバックグラウンドを生かして研究活動をおこなう。
2022年4月より電通総研。活動テーマは「ケア」「ウェルビーイング」。クリエーティブ、コミュニケーションプランニングの実務経験と人文系研究のバックグラウンドを生かして研究活動をおこなう。