

電通総研と電通未来予測支援ラボは、東京経済大学・柴内康文教授の監修のもと、「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査2022」を、2022年9月~10月に日本全国12,000名を対象に実施しました。「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査」は、社会に関する人びとの意識・価値観を把握することを目的として2019年12月に第1回調査を開始して以来、年に1回実施しており、今回で4回目となります。
本記事では、2019年から2022年の4年間を通じて変化した項目の中から特徴的なもの、今年から新たに設問に加えたものをいくつかピックアップして取り上げ、あわせて本調査全体のレポートを公開いたします。
◎「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査 第4回調査レポート」はこちら。
クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査 第4回調査レポート.pdf
この4年間で変化した項目
1.日本人であることに「誇りを感じる」が減少傾向
2022年調査では「あなたは、日本人であることに誇りを感じますか」という質問に対し、「誇りを感じる(計)」の人の割合は63.3%、「誇りを感じない(計)」人の割合は10.2%となりました。2019年からの4年間の変化を見ると、「誇りを感じる(計)」は9.6pts減少し、「誇りを感じない(計)」は3.3pts増加する結果となりました。日本人であることに「誇りを感じる」人は年々減少しています。

2022年調査では「男性の育休取得」について受け入れられるかという質問に対し、「受け入れられると思う」「どちらかといえば受け入れられると思う」の合計が81.5%という結果となりました。2019年~2022年にかけての変化を見てみると、2019年からは9.1pts増加しています。2022年4月には育児・介護休業法が改正され、企業から従業員への育休取得の促進が「努力目標」から「義務化」となるなど、政府や企業の動きが影響しているのではないかと推測されます。

2022年調査から新設した項目
3.リカレント教育経験や意向度、障壁
「リカレント教育」についての意向を尋ねたところ、「リカンレント教育を受けたことがある/現在受けている」は3.6%、「意向あり(計)」は、38.3%となりました。性年代別にみると、女性40代(45.7%)、女性50代(41.4%)、女性30代(41.1%)の順で意向が高く、男性では、40代(39.7%)で意向が高い結果となりました。
※「意向あり(計)」は「リカンレント教育を受けてキャリアチェンジしてみたい」「キャリアチェンジまでは考えていないが、リカレント教育を受けてみたい」「リカンレント教育に興味があるが、実際にはできないと思う」の合計。


新型コロナウイルス感染症拡大の前後で居住地の変化について尋ねたところ、変化があったと答えた割合は、5.7%という結果となりました。この中には移住のほか、多拠点生活を始めた人も含まれています。これは、テレワークの利用などによる働き方の変化が影響していると考えられます。国土交通省が2021年に実施した国民意識調査(出典:国土交通省「国土交通白書 2021」)では、新型コロナウイルス感染症拡大前と2021年時点の二地域居住・地方移住に対する関心の有無を尋ねたところ、関心のある人の割合は、新型コロナウイルス感染症拡大前は9.2%だったのに対し、2021年時点では12.9%と関心が高まっていることがわかりました。
※新型コロナウイルス感染症拡大の前後で居住地に変化のあった割合は、「都会に住んでいたが、郊外や田舎の方に移住した」、「郊外や田舎の方から、都会に方に移住した」、「多拠点生活を始めた」の合計

調査結果のまとめ
クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査は、今回で4回目となりました。本記事では、この4年間における人びとの意識の変化の中で、変化量の大きかった「日本人としての誇り」と「男性の育休取得の許容度」を取り上げました。「男性の育休取得」に関する意識は、法整備の拡充も後押ししているのではないかと思います。
今回から新たに加えたリカレント教育の設問では、リカンレント教育に「意向あり(計)」が、38.3%という結果でした。「人的資本への投資」といった政府の方針発表もある中、実際には、心理面・金銭面などさまざまな障壁からリカレント教育を受けることを諦めていることもわかりました。こうした障壁の解消が今後の課題となってくると思います。移住に関する設問では、新型コロナウイルス感染症拡大の前後で居住地状況に変化があったと答えた人は5.7%という結果でした。新しい働き方の浸透や政府による地方移住促進政策などにより、今後さらに人びとの意識や関心は高まってくるのではないかと考えられます。
新型コロナウイルス感染症の症例が日本で初めて確認されて、3年が経ちました。その間にさまざまな社会の変化や生活の変化があり、人びとの意識や価値観にも大きく影響を与えてきたと思います。まだまだ先行きが不透明ではありますが、今後もよりよい社会の実現に向けて人びとの意識変化に注目していきます。
*グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。また、各割合を合算した回答者割合も、全体に占める合算部分の回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値と必ずしも一致しない場合があります。
*12,000サンプルの標本サイズの誤差幅は、1.96×0.5*0.5/109.544=0.9/100となります。よって過去調査との比較で±1ポイントの差があれば有意な差があるとみなされます。
調査概要
第2回 2020年11月11日~17日
第3回 2021年10月19日~28日
第4回2022年9月28日~10月7日
調査手法 :インターネット調査
対象地域 :全国
対象者 :18~74歳の男女計12,000名
調査会社 :株式会社電通マクロミルインサイト
E-mail: d-ii@dentsu.co.jp
URL: https://institute.dentsu.com
未来予測支援ラボ 担当:小椋、立木、小野、千葉
E-mail: future@dentsu.co.jp
URL: https://www.dentsu-fsl.jp
Text by 合原 兆二
Photograph by Francesco Ungaro on Unsplash

合原兆二 ごうばる・ちょうじ
電通総研 プロデューサー/研究員
1990年、大分県日田市生まれ。中央大学商学部卒業後、2013年、株式会社電通九州に入社。福岡本社営業局、北九州支社を経て、2022年4月より電通総研。各種調査のほか、「地域」「メディア」「持続可能な食文化」などをテーマに活動。
1990年、大分県日田市生まれ。中央大学商学部卒業後、2013年、株式会社電通九州に入社。福岡本社営業局、北九州支社を経て、2022年4月より電通総研。各種調査のほか、「地域」「メディア」「持続可能な食文化」などをテーマに活動。