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「クオリティ・オブ・ソサエティ」レポート
こちらは2023年までの電通総研が公開した調査関連のレポートです。過去のレポート記事は、以下のリンクからご覧いただけます。毎年掲げるテーマに即した、有識者との対談、調査結果、海外事例、キーワードなどがまとめられています。
クオリティ・オブ・ソサエティ指標2023 ①
人びとの「余力」「希望」「安心」の現在と未来

電通総研は全国12,000名を対象に「クオリティ・オブ・ソサエティ指標」の調査を実施しました。
本記事では、日本の人びとの生活や社会についての「実感」や社会の質に関する評価と期待、DXに関する意識の時系列変化をご紹介いたします。

「クオリティ・オブ・ソサエティ指標2023 調査レポート」はこちら

※2023年より「クオリティ・オブ・ソサエティ年次調査」と「クオリティ・オブ・ソサエティ指標」の2つの調査を統合いたしました。

生活や社会についての「実感」

余力・希望・安心について
本調査では、「地域」「日本」「世界」などに対し、現在「余裕(余力)」があるか、「希望」があるか、「不安」があるかについて、「そう思う」「ややそう思う」「あまりそう思わない」「そう思わない」の4段階で回答してもらいました。「余力」「希望」は「そう思う」と「ややそう思う」の計、「安心」は不安があるかを尋ねた際の「そう思わない」と「あまりそう思わない」の計の百分率を指標として使用します。数値が大きいほど余力や希望があること、安心していることを示しています。

【余力】
「心の余裕(余力)」「家計の余裕(余力)」のどちらも、この3年間で大きな変化は見られません。前々回(21年5月)から前回(22年6月)にかけて微減し、今回は微増したもののほぼ横ばいにとどまります。(図1・2)

【希望】
「日本には希望がある」も「世界には希望がある」もこの3年間で大きな変化は見られず、ほぼ横ばいです。また、前々回・前回同様に「日本」よりも「世界」の方が、希望があると思われていることがわかります。(図3・4)

【安心】
「日本には不安がない」「世界には不安がない」もこの3年間で大きな変化は見られず、前回からの微増にとどまりました。また、前々回・前回同様に「世界」よりも「日本」の方が、不安がない(安心である)と思われていることがわかります。(図5・6)

目指すべき社会像について

環境と経済について目指すべき社会像を尋ねた設問では、「日本は、経済力の維持よりも地球規模の環境問題の解決を重視して取り組むべきだ」(21.3%)よりも「日本は、経済力の維持と地球規模の環境問題の解決の両立を目指すべきだ」(78.7%)が高くなり、両立を考えている人が日本での主流な意見であることがわかります。しかし、18~29歳では約3割が「地球規模の環境問題の解決を重視して取り組むべきだ」と考えていることが注目されます。(図7)

統治システムについて尋ねた設問では、「日本は、コミュニティ・経済などの機能が集約されている地域が多数存在し、地域ごとの文化や生活に多様性があり、リスクも分散できる『多極型』社会を目指すべきだ」と回答した人(75.3%)は「日本は、政治・経済・文化などの重要な機能が、少数の大都市に効率的に集中している『一極集中型』社会を目指すべきだ」と回答した人(24.7%)の3倍にも及びます。2020年調査時よりもやや減りましたが、それでも「一極集中型」よりも「多極型」社会を望む人が多いことがわかります。

また、年代ごとに2020年との時系列比較を見ると、「『一極集中型』社会を目指すべき」と思う割合が18~29歳では7.2ポイント、30代では6.3ポイント、40代では3.7ポイント、50代では2.1ポイント、70代では2.5ポイント増加していることが注目されます。60代ではほぼ変化が見られませんでした。(図8)

税負担と福祉などの行政サービスについて尋ねた設問では、「日本は、個人の税負担は大きいが、福祉などの行政サービスが充実した社会を目指すべきだ」と思う人は、2020年の68.8%から今年は59.6%と9.2ポイント減少しました。税負担の少ない社会よりも、福祉などの行政サービスの充実した社会を望む人が過半数です。しかし、半数は超えないものの、税負担の少なさを望む割合が若い世代で高いことは前回と変わりません。(図9)

「社会の質」への評価と期待―【社会の活力】について

現在の社会について尋ねた評価と、どうあるべきかについて尋ねた期待を比較しました。「日本社会は、一人一人の力で変えることができる」と思う人(評価)は全体で45.4%であったのに対し、「一人一人の力で変えることができる社会であるべきだ」と思う人(期待)は84.9%でした。性別や年代別では、男性よりも女性、また年代が高くなるほど「一人一人の力で変えることができる社会であるべきだ」と期待していることがわかります。(図10・11)

また、今回の調査では、前々回・前回と比較して「日本社会は、一人一人の力で変えることができる」の数値が伸びたことが注目されます。さらに、70代男性・60代女性・70代女性においては過半数が「そう思う」と回答しています。(図12・13)

DX有効感について

デジタル化による影響に関して尋ねた設問のうち、より多くの人にとって身近な住む場所と働き方についての結果に注目しました。「デジタル化によって、住む場所の選択肢が広がっている」と思う人は昨年の65.6%から今年は58.3%へと7.3ポイント減少しました。また「デジタル化によって、働き方の選択肢が広がっている」と思う人は昨年の72.5%から今年は65.7%へと6.8ポイント減少しています。(図14)

まとめ

目指すべき社会像に関して、全体では「多極型」社会を望む意見が多いですが、若い世代ほど「一極集中型」社会を望む意見が増える傾向にあります。また、若い世代ほど福祉などの行政サービスを必要最小限に絞り、税負担の少ない社会を望む人が増えています。過疎化の進む地域問題から多様な地域での持続可能な社会づくりなど、これからの豊かな超高齢社会に向けて、若い世代と支え合う社会づくりが引き続き大きな課題であるといえます。

今回の調査は、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の2023年6~7月におこなったためか、「余力」に関する数値が微増し、「社会の活力」である「日本社会は、一人一人の力で変えることができる」の数値が増えました。日本にとっての明るい兆しといえるのではないでしょうか。
コロナ禍をきっかけに高まっていたデジタル化への期待は低下し、揺り戻しが見られました。

*グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づいて算出し四捨五入で表記しています。そのため、各割合の単純合算数値は必ずしも100%とならない場合があります。また、各割合を合算した回答者割合も、全体に占める合算部分の回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値と必ずしも一致しない場合があります。 

*12,000サンプルの標本サイズの誤差幅は、1.96×0.5*0.5/109.544=0.9/100となります。よって過去調査・他項目との比較で±1ポイントの差があれば有意な差があるとみなされます。

「クオリティ・オブ・ソサエティ指標2023」
調査時期 :2023年6月14日~7月4日
調査方法 :インターネット調査
対象地域 :全国
対象者  :18~79歳の男女計12,000名(都道府県×性年代の人口構成比に合わせて回収) 
調査会社 :株式会社電通マクロミルインサイト 
本調査に関する問合せ先
電通総研 担当:山﨑、中川、小笠原、合原、日塔 
E-mail: qsociety@dentsusoken.com
URL: https://qos.dentsusoken.com

Text by Nozomi Ogasawara



小笠原 望 おがさわら・のぞみ

電通総研 プロデューサー

東京都生まれ。株式会社電通へ入社後、雑誌メディア・PR・ビジネスプロデュース・人事局労政部など多岐にわたる業務を経験。2023年より電通総研。主な研究テーマは「多文化共生」「地域」。

東京都生まれ。株式会社電通へ入社後、雑誌メディア・PR・ビジネスプロデュース・人事局労政部など多岐にわたる業務を経験。2023年より電通総研。主な研究テーマは「多文化共生」「地域」。