電通総研

吉田宏平氏×ラウル・アリキヴィ氏×平和博氏
鍵は透明性と納得感。
電子立国・エストニアから学ぶ社会システムの将来像
2019年11月27日、「電子立国エストニア最新情報から考える『電子政府と未来社会』」と題して開催された第2回電通総研セミナー。ラウル・アリキヴィ氏、吉田宏平氏、平和博氏のプレゼンテーションに加えて、有園雄一氏を交えて「なぜエストニアは電子立国になれたのか」「今後日本はどう進むべきか」などを論点に議論が交わされました。

会場の様子

今回の登壇者は日本・エストニア/EUデジタルソサエティ推進協議会理事を務めるラウル・アリキヴィ氏、内閣官房 情報通信技術総合戦略室(IT総合戦略室) 内閣参事官を務める吉田宏平氏、桜美林大学リベラルアーツ学群教授でジャーナリストの平和博氏。モデレーターを有園雄一氏が務めました。

セミナーの前半は、エストニアと日本の電子政府化の事情や、AI社会の問題点を概観するプレゼンテーション。後半は、マイナンバーカードやAIスコアリングなどの具体的な論点を挙げてのディスカッションが行われました。

ラウル・アリキヴィ氏が話す様子

【ラウル・アリキヴィ氏】エストニアが選んだIDカード義務化の道

まずは、ラウル・アリキヴィ氏から、エストニアの電子政府について紹介していただきます。

私は2007年から6年間、エストニア経済通信省で電子政府化の取り組みに携わりました。 エストニアでは現在、所得税申告の96%がオンラインで行われ、人口におけるインターネット使用率は88%に達しています。暮らしていくために必要な公共サービスのほとんどがオンラインですぐにできるので、役所や銀行にはめったに行きません。会社の設立でさえ、わずか18分で手続きが終了します。

ちなみに、私は日本に暮らしているのですが、今日は在留カードを更新するために区役所へ行ってきました。移動時間を含めて、手続きに2時間以上もかかりましたね。

エストニアにおけるICTの普及状況の図
出所:ラウル・アリキヴィ氏のプレゼン資料「未来型国家エストニア:本当の姿」

では、なぜエストニアは電子政府を実現することができたのでしょうか。

エストニアは1991年に旧ソ連から独立。人口が130万人ほどの小国ですから、国の立て直しの一環として、生産性を高めるためにICTへの投資が積極的に進められました。2001年には、国民ID番号が記録されたICチップ付きのeIDカードを導入。これが、エストニアの電子立国化の第一歩でした。

eIDカード制度は隣国フィンランドを参考にしましたが、違うことが1つ。フィンランドでは所持が自由なのに対し、エストニアでは義務化したのです。これにより、全国民がeIDカードを持つことになり、一気に普及しました。今はスマホでも利用できます。

ラウル・アリキヴィ氏が話す様子

現在、エストニアの電子政府が計画しているものは次の3つです。1つ目は、効率と透明性を担保した「government as a service」を実現すること。2つ目が、行政の無駄を省いて手続きを削減する「zero-bureaucracy」。そして、政府との不要なコミュニケーションを省く「invisible service」です。

また、エストニアには「Once Only」という考え方があります。これは国民が個人情報を入力するのは一度きりで、政府は二度聞かないということ。異なるサービスを利用するたびに、何度も同じような情報を入力する必要がないのです。

こうした電子政府の根幹にあるのが、分散型データ交換基盤システム「X-road」です。政府と民間のあらゆるデータベースをつないだことで、民間企業は「X-road」経由で国民の個人情報にアクセスできるようになりました。一方、国民もeIDでアクセスすることで、行政や民間のサービスをワンストップで利用できようになり、このことで「Once Only」が実現しています。

eIDカード所持を義務化したことで、新しいマーケットが生まれ、民間企業を含むあらゆるサービスが一元化されました。日本のマイナンバーは個人情報として機密扱いですが、エストニアでのeIDはデジタルネームのため、オープンにすることに抵抗感を持つ人はほとんどいません。

エストニアと日本の大きな違いは、エストニアは効率主義、日本は完璧主義であるということです。国民が少ないエストニアは常にリソースが足りないため、効率化が不可欠。紙をデジタルにするだけでなく、デジタルファーストの考え方であらゆることに取り組んでいるのです。

吉田宏平氏が話す様子

【吉田宏平氏】電子化を目指した日本が陥った2つの不幸

次に、内閣参事官の吉田宏平氏に、日本の電子政府化への取り組みをお話しいただきます。

実は日本はデジタル化に取り組み始めた時期が比較的早かったんです。しかし、現在もあまり電子政府化が進んでいない理由として、2つの不幸があったと考えています。

1つ目は、「デジタル化=電子化」と捉えてしまったこと。つまり、紙を電子化することで終わってしまったんです。2002年に行政手続オンライン化法ができて、例外的に紙の手続きを電子化してよいことになりました。

しかし、単なる電子化としてのデジタル化(digitization)と、ビジネスモデルの変化を伴うデジタル化(digitalization)はまったくの別物です。この反省を踏まえ、現在はエストニアを参考にして「Once Only」の原則を徹底し、デジタル手続法を制定する等、行政手続きを効率化させるための取り組みを推進しています。

2つ目の不幸は、マイナンバーカード導入時に個人情報保護の観点から活用が限定的になってしまったことです。現在、日本のマイナンバーカード交付率は14.3%(2019年11月時点)。決して高くはありません。こうした中、日本政府はマイナンバーカードの利便性をさらに高め、2022年にはほとんどの国民が使っている社会にするという目標を掲げています。

吉田宏平氏が話す様子

電子政府化を進めるにあたっては、ICTやAIのリテラシー教育も重要です。

情報化社会の次に訪れる「Society 5.0」。IoTであらゆるモノと人がつながり、AIによって必要な情報が必要なときに提供され、ロボットや自動運転車によって人の可能性が広がる社会は、もう始まっています。

2019年6月、政府は「AI戦略 2019」を発表し、人材、産業競争力、技術体系、国際の4分野で戦略目標を掲げました。人材領域を例に挙げると、今後はICTリテラシーはもちろんのこと、AIリテラシーを高める教育が不可欠。そこで、小中高では1人1台の端末を持ち、ICTリテラシー教育を実施。大学では文理問わずAI×専門領域のWメジャーを導入するほか、エキスパート人材を育てる構想を進めています。

AIの社会実装は、交通では自動運転、医療では画像解析による診療支援、インフラでは橋や道路の点検支援などで進みつつありますが、外部からの不正操作やAIが異常を見逃すことで事故につながるといったリスクもあります。また、日本でも導入が進んでいるAIスコアリング※1も議論を呼んでいますよね。どのようにスコアが利用されるかわからない不安や、スコアを上げようとする人が増えることで多様性がなくなる恐れがあるといった課題があります。

「AI利活用原則」の図
出所:吉田宏平氏のプレゼン資料「Society 5.0に向けた取組」

こうしたメリットとリスクを踏まえ、政府としても、「AI利活用ガイドライン」を制定。目指すべき社会モデルを検討し、AIの社会実装を加速させていく考えです。

※1 AIスコアリング
AIを使って個人の信用力を数値で示してスコアリング。その数値に応じてさまざまなサービスを受けられるという仕組み。
平和博氏が話す様子

【平和博氏】私たちは人間中心のAI社会に向かっているのか?

最後に桜美林大学リベラルアーツ学群教授の平和博氏より、ジャーナリストの視点から話していただきます。

おふたりの話をひっくり返すようになりますが、私からは「AIと民主主義」というテーマでお話ししたいと思います。

果たして、私たちは「人間中心のAI社会」に向かっているのでしょうか?

2019年春には内閣府の有識者会議が「人間中心のAI社会原則」を発表していますし、EUの専門家会議でも「human-centric AI」というキャッチフレーズが掲げられました。世界的にも、AIの活用においては「人間が中心」であることが大きな柱になっています。でも、現実はどうでしょう?

今後AIの進展によって影響を受け、かつ、その重要性が高いものとしては、データプライバシー、サイバーアタック、監視社会、情報操作などが挙げられます。そして、すでにこうした懸念が現実になったケースが頻発しています。

例えば、2016年のアメリカ大統領選において、Facebookから抜き取られた8700万人のユーザーデータをAIで分析し、これをトランプ陣営が選挙戦に利用したといわれています。さらにロシア政府もその同じデータを使って大統領選に介入し、激戦区で議論が分かれるようなマイクロターゲティング広告※2を打ったのではないかという疑惑が指摘され、問題となりました。これらのケースでは、民主主義への介入にAIが使われた可能性があるわけです。

平和博氏が話す様子

また、AIを使ったフェイク動画「ディープフェイクス」も近年急増しています。猥褻な動画に著名人の顔画像を貼りつけ、本人の動画のように見せかけるもので、2017年秋頃に登場しました。こうした動画は対立する政治家やジャーナリストを攻撃する手段として政治利用もされており、AIを使った組織的なプロパガンダは今や世界各地で行われています。

自動運転車による死亡事故も発生しています。アリゾナ州では、実証実験中のUberの自動運転車が、車道を横断中の歩行者をはねた事故が世界に衝撃を与えました。驚くべきことに、搭載されていたAIは最後まで歩行者を人間と認識できませんでした。横断歩道の外に人がいることが、そもそも想定されていなかったことがその原因です。さらに、乗車していたドライバーは事故当時、車内でネット動画を見ていたことが明らかになっています。

AIの活用が進む中国では、AI、ビッグデータ、センシング技術を盛り込んだ監視ネットワークを使って、新疆ウイグル自治区で継続的に弾圧が行われているとの指摘がありました。国際調査報道ジャーナリスト連合が中国当局の内部文書を示してそのように指摘しました。

AIやデジタルは社会を前進させる方向にも活用できますが、このようにネガティブな方向に影響を与える可能性もあり、未来への不安を持ち始めた人々がいます。

Uber車の死亡事故が起きたアリゾナ州の隣の市では、Waymo※3による自動運転車の実証実験に対して、地元住民による抗議活動が発生。住民たちは実験車を銃で威嚇したり、タイヤをパンクさせたりといった妨害を繰り返しました。いわば「自分たちを未来へせき立てるな」というメッセージです。

「人間中心」ではなく、AI社会から人間が置き去りにされ始めてはいないか。こうした事例からは、そう感じてなりません。

※2 マイクロターゲティング広告
個人に関する情報を分析して嗜好や行動パターンを把握することで、より効果的な戦略を構築するマーケティングの手法。
※3 Waymo
Google の親会社Alphabet傘下で自動運転車を開発する部門。
有園雄一氏×ラウル・アリキヴィ氏の写真

【ディスカッション】「透明性の確保」が電子政府化の後押しに

ここまでのプレゼンテーションを受けて、まずはエストニアについて聞きたいことはありますか?

アリキヴィさんに質問が。エストニアでは電子政府化を進めるにあたって、先ほど私が紹介したWaymoに対する抗議のような反対運動は起きなかったのでしょうか?

アリキヴィ

エストニアは長いこと旧ソ連に支配されていたので、国民には「過去に戻りたくない」という気持ちがありました。ですから、電子政府化も受け入れやすかったのだと思います。しかし、国民は必ずしも政府を信頼しているわけではありません。

電子政府化に反対する人がいなかった理由として、透明性が担保されていることが挙げられます。政府や企業は「X-road」経由でしか個人情報にアクセスすることができませんし、閲覧履歴が残るため、誰がいつ自分のデータを見たのかが確認できます。閲覧者に対して、なぜ自分の情報を見たのかを聞く権利もあります。国民が自分で管理できる仕組みになっているのです。

腐敗が横行していた時代を知っているからこそ、「人間が管理する政府を信頼するより、コンピューターが管理する政府を信頼できる」という人が多かった。コンピューターは賄賂を受け取らないですからね。

ラウル・アリキヴィ氏が話す様子

吉田

システムや法律で透明性を確保することが、政府に対する信頼性につながっているんですね。

「独立前の国がダークサイドだったから、それより良くなるはず」という考えは、説得力がありますね。

吉田

日本の場合、アメリカのような反対運動はありませんが、その理由の1つは、そもそもデジタル化が進んでいないことにあります。

デジタル化を進めるときに、僕らはデジタル・ディバイド※4について考えます。これが日本においてテクノロジーに対する反対運動が起きにくい理由になっていたんです。しかし、デジタルを使いこなせない人々に合わせることばかりを考えていると前に進まなくなってしまう。ですから、サポートはしつつ、これからはもう少しアクセルを踏み込んでいかなければならないと考えています。

※4 デジタル・ディバイド
インターネット等の情報技術を使える人と使えない人の間の情報格差。
吉田宏平氏が話す様子

デジタル・ディバイドをどう乗り越えるか

アリキヴィ

エストニアではデジタル・ディバイドの問題はほぼないと思います。というのも、20年ほど前に政府が、40〜50代の人に、つまり今の高齢者世代を対象にICTの基礎スキル講座を提供したからです。

吉田

デジタル・ディバイドを教育で解決しようとしているのは日本も同じですが、単発での講座はあっても、エストニアのような長期的な取り組みはできていないですね。そのため、いまだに課題として残っています。

ICT教育はこれからの日本経済を支える根っこの部分。だからこそ、教育改革が必要です。国民全体のリテラシーを高めて裾野を広げるために本腰を入れて取り組んでいこう、というのが今の段階です。

教育現場にいる立場から突っ込むと、「リテラシーを誰が教えるのか」という問題があります。ソーシャルメディアを使った児童誘拐事件もありましたが、これはAIリテラシー以前にソーシャルメディアリテラシー、デジタルリテラシーの教育ができていないということに他なりません。

40〜50代ぐらいの先生だと日常的にソーシャルメディアを使っていない人も少なくないわけで、適切に教えられる人は限られます。まして、AIリテラシーを誰が教えられるのでしょうか。

アリキヴィ

「誰が教えるか」という問題はエストニアにもあります。国全体のモデルではないのですが、ある小・中学校で面白い取り組みがありました。その学校では「IT生徒」という中高生がいて、年下の子にデジタルを教える手伝いをしています。高校生になると学校からお給料がもらえる。非常にいいモデルだと思います。

吉田宏平氏×平和博氏の様子

マイナンバーカードをすべての人が持つ日は来るのか

先ほど「2022年には日本国民のほとんどがマイナンバーカードを持つ社会にする」という話が吉田氏からありました。そんなことが可能なのでしょうか?

吉田

実現したいと考えています。そのためには、利便性を高めることが不可欠。まずは本人確認をマイナンバーカードでできるようにして、さまざまなサービスにつなげていきます。

ニュースでご存じの方も多いでしょうが、「マイナポイント※5」の導入も検討中です。25%ポイント還元するため、2万円払うと2万5,000円分利用可能となります。

アリキヴィ

エストニアではID制度が普及していますが、全国民が持っても130万人です。一方、日本の場合は現時点で所持率14%くらい。すでにエストニアをはるかに上回るマーケットができています。そう考えると、新しいサービスは作れるはずです。

デジタルを優遇する施策はエストニアにもあります。デジタルサービスの利用は無料で便利にする一方、マニュアルサービスは有料で不便にする。「今のままでもいいけど、新しいやり方を覚えればタダですぐにできるよ」と、デジタル化をプッシュしています。

平和博氏が話す様子 

この議論で思い出すのが、メディア研究者、マーシャル・マクルーハンの言葉です。

「われわれはバックミラーごしに現在を見ている。われわれは未来にむかって後ろ向きに行進している」※6

つまり、過去の枠内で未来を見てしまう。かつて自動車が登場したとき、「ホース・レス・キャリッジ(馬なし馬車)」と呼ばれていました。しかし、自動車を「馬なし馬車」と定義すると、社会変革につながるその可能性の大きさが見えなくなってしまいます。最近のICT政策においても同じような雰囲気を感じています。

国には「ポイントが付いてお得」という小さな絵ではなく、もっと大きな絵を描いて、「そういう未来が来るなら使ってみよう」とわれわれを誘い出してほしいですね。「社会全体がそっちに行くんだ」というような、みんなが共有できる納得感が必要だと思います。

吉田

提示しているビジョンが小さな絵であるという批判は、その通りかもしれません。しかし、大きい絵がないから進まないというのは違います。前に進むために、今できることを少しずつやっていくことも重要ではないですか?

ラウル・アリキヴィ氏が話す様子

アリキヴィ

エストニアも、eID制度ができた頃は誰も今のようになるとは思っていなかったはず。ステップ・バイ・ステップで進んできました。

国がビジョンを提示することも必要ですが、国だけの役割ではないと思います。日本は大きい国なので、国のプロジェクトになると失敗できないかもしれません。しかし、新しいことに挑戦するためには、失敗するのが当たり前。大事なことは、失敗しても止めないことです。

※5 マイナポイント
2020年度実施予定のマイナンバーカードを活用した消費活性化策の名称。
※6 「われわれはバックミラーごしに現在を見ている。われわれは未来にむかって後ろ向きに行進している」
『メディアはマッサージである:影響の目録』(河出文庫)門林岳史訳(2015)より
有園雄一氏×ラウル・アリキヴィ氏の写真

AIスコアリングへの不安はどこから来るのか

AIスコアリングについても伺いたいのですが、この会場で、AIスコアリングに抵抗を感じる人はどのくらいいますか?(3分の2ほどの聴講者が挙手)漠然とした不安を持っている人が多いようですね。

僕自身は漠然とイヤ派です。一方で、仕方がないとも思っています。なぜなら、学校のテストの成績、給与の査定など、僕らはずっと周りからスコアリングされてきて、当たり前になっているから。でも、その仕組みが分からないのはイヤなんです。

吉田

AIスコアリングは決して悪いことではなく、使い方次第だと思います。怖いと思うのは、仕組みが分からず、自分が知らないうちに、誰かが勝手に自分の情報を使っているかもしれないという不安があるからですよね。どのようにスコアを評価するかはサービス提供社の企業秘密だと思いますが、透明性を保ち、用途を明確にすることは必須でしょう。

僕もイヤ派です。これまでの人事なら「あの人とあの人が話し合って…」というのがなんとなく分かりますが、AIが自動判定するとなると、なぜそうなったのかが分からない。例えばApple Cardでは、夫婦で全く同じ条件なのに、貸付限度額に大きな男女差があったというケースがありました。

また、AIに学習させるデータは過去のもの。過去の社会が持っていた偏見やゆがみのあるデータが、AIによる学習でアルゴリズムに反映されてしまいます。AIの専門家でさえ、「AIが何を考えているのかは分からない」と言います。

つまり、AIの判断というのはブラックボックスで、そこに偏見や差別が紛れ込んでいても、人間にはなかなか判別できない。だから、不安なんです。

吉田

僕はもう少し、楽観的に考えています。人間は未知のものに対しての判断が厳しくなりがちです。だから、新しいスタートを切るハードルが上がってしまう。そこを少しだけ、「便利さ」や「お得感」で緩めてもいいのかなと思います。

吉田氏の話す様子

最後に、電子政府化を進めるにはどうしたらいいと思いますか?

アリキヴィ

日本は正しい方向に進んでいると思います。スピードは遅いけれど。一度決まったことを変えるのは難しいですが、時には考え直すことも大事だと思いますね。

吉田

マイナポイントを含め、政府としては普及に向けて、なりふり構わずにやっていきます。

やはり、納得感がなければついていけません。さまざまな課題については急ピッチで対策を進めるとともに、社会の大きな方向性を示して共有してもらいたいですね。

Text by Kayo Murakami
Photographs by Kohta Nunokawa



吉田宏平 よしだ・こうへい

内閣官房 情報通信技術総合戦略室(IT総合戦略室) 内閣参事官

1994年郵政省(現総務省)入省。携帯電話やインターネット関係の制度整備などに従事。2013年~15年に株式会社電通出向(ソーシャル・ソリューション局・BCC)を経て、2016年以降、医療・健康・介護分野のICT化の推進やICTによる働き方改革、地域の放送サービスの高度化を推進。2018年7月より現職、社会全体のデジタル化・データ活用に向けた戦略策定を担当。

1994年郵政省(現総務省)入省。携帯電話やインターネット関係の制度整備などに従事。2013年~15年に株式会社電通出向(ソーシャル・ソリューション局・BCC)を経て、2016年以降、医療・健康・介護分野のICT化の推進やICTによる働き方改革、地域の放送サービスの高度化を推進。2018年7月より現職、社会全体のデジタル化・データ活用に向けた戦略策定を担当。

ラウル・アリキヴィ

日本・エストニア/EUデジタルソサエティ推進協議会理事

1979年エストニア生まれ。タルトゥ大学卒業後、早稲田大学修士課程を修了し、エストニア経済通信省入省。エストニア経済通信省で局次長を務め、2020年に向けたエストニア情報社会のための新たな戦略と政策の設計などを担当。現在は日本を拠点として、PlanetwayのCROを務める。共著に『未来型国家エストニアの挑戦 電子政府がひらく世界』(NextPublishing)がある。

1979年エストニア生まれ。タルトゥ大学卒業後、早稲田大学修士課程を修了し、エストニア経済通信省入省。エストニア経済通信省で局次長を務め、2020年に向けたエストニア情報社会のための新たな戦略と政策の設計などを担当。現在は日本を拠点として、PlanetwayのCROを務める。共著に『未来型国家エストニアの挑戦 電子政府がひらく世界』(NextPublishing)がある。

平和博 たいら・かずひろ

桜美林大学リベラルアーツ学群教授・ジャーナリスト

早稲田大学卒業後、1986年朝日新聞社入社。横浜支局、北海道報道部、社会部、シリコンバレー(サンノゼ)駐在、科学グループデスク、編集委員、IT専門記者(デジタルウオッチャー)などを担当。2019年4月から現職。著書に『悪のAI論 あなたはここまで支配されている』、『信じてはいけない 民主主義を壊すフェイクニュースの正体』(共に朝日新書)などがある。

早稲田大学卒業後、1986年朝日新聞社入社。横浜支局、北海道報道部、社会部、シリコンバレー(サンノゼ)駐在、科学グループデスク、編集委員、IT専門記者(デジタルウオッチャー)などを担当。2019年4月から現職。著書に『悪のAI論 あなたはここまで支配されている』、『信じてはいけない 民主主義を壊すフェイクニュースの正体』(共に朝日新書)などがある。