電通総研

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始まりを、始めよう。

 江⼾時代中期に、中村仲蔵という歌舞伎役者が活躍しました。仲蔵は役者の家柄の⽣まれではなく、下積みの苦労が続くのですが、努⼒が認められて名題(なだい)に出世し、「仮名⼿本忠⾂蔵」の⼤舞台に⽴つ機会がめぐってきます。ところが与えられたのは客のお⽬当てではない「五段⽬」の斧定九郎ただ⼀役。仲蔵は悔しい思いを奮起に変えて、斧定九郎を従来の常識とはまったく違うキャラクターとして演じてみせ、客の⼤喝采を浴びます。
 中村仲蔵の逸話は、落語、講談、時代⼩説やドラマなどに仕⽴てられ、現代においても広く親しまれています。今⾵の⾔葉を使うなら、「親ガチャには当たらなかった⼈材が、先例にこだわらず、⼤胆なイノベーションを採り⼊れることによって、新しい顧客満⾜を創り上げた」ということでしょうか。


 ⼀⽅で、歌舞伎の世界において、親ガチャに当たれば将来にわたって安泰が保証されるかというと、決してそうではないと思います。
 ⼤名跡の御曹司ともなれば、幼い頃から毎⽇、稽古に励む。もちろん学校にも通う。周囲の期待をプレッシャーに感じることもあるでしょう。
 ⾃分が望んだ道である。⾃分が楽しんでやれる。そういう思いをもてなければプロとして⼤成することはできないだろうと想像します。
 どんな職業であっても、⾨⼾を狭くしないことや、⼊ってきた⼈材のモチベーションと先⾏きの希望をあと押しするしくみをもつことが、これからの⽇本社会にとって、とても⼤切なことではないかと思います。


 さて、2021年の⽇本社会のトピックスのひとつは、ダイバーシティ&インクルージョンについての理解が急速に深まったことだと思います。
 ジェンダー、LGBTQ+、⼈種や国籍による差別、など、さまざまなニュースに⼈びとが関⼼をもちました。⽣活する地域や職場などで、こうした社会課題を実感した⼈も多かったのではないかと思います。
 1年遅れて開催された「東京2020パラリンピック」は、障がいのある⼈だけでなく、あらゆる⼈の多様性を尊重する共⽣社会の重要性が、広く認識される機会になりました。


 しかし現実には、政治や経済をはじめとするさまざまな分野において、ジェンダーの格差が根強く存在しています。ジェンダーの問題だけでなく、社会におけるいろいろな制約によって、⾃分の希望を叶えられないでいる⼈びとの閉塞感やもどかしさに、私たちはもっと想像⼒を働かせないといけないと思います。
 2022年は、⼭積するさまざまな社会課題の解決をこれ以上先送りできない年になると思います。課題の連鎖を希望の連鎖に転換し、希望の連鎖を次世代への贈り物にする始まりの年になってほしいと思います。

「次世代に、希望をつなごう」。
電通総研はこのキーワードを掲げて、
「クオリティ・オブ・ソサエティ2022」
の活動を始めます。